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異世界ブギウギ。  作者: 渡良瀬ワタル
111/373

(アリス)35

 探知スキルの範囲外だが地響きが凄い。

それに妙な声、いや鳴き声か。

複数、聞こえて来た。

「ゲコーゲコー」「ゲロッゲロッ」「グエッグエッ」重厚にして、広がる低音。

完全に蛙ではないか。

地響きの大きさからするとフロッグレイドしか思い浮かばない。

蛙の種から枝分かれした魔物で、巨椋湖の主と言われている奴だ。

縦横5メートルほどに成長した身体で跳躍して来たのだろう。

ありとあらゆる物を踏み潰して、なんて厄介な奴。

 クランクリンの群が敏感に対応した。

蜘蛛の子を散らすかのように一斉に逃げて行く。

後方や左右から襲って来た魔物達も例外ではなかった。

一瞬、身体を硬直させたものの判断は早かった。

これまた、てんでに逃げて行く。

 遅れたのは盾の陣の前に蹲っている冒険者四人。

ようようの事で上半身を起こし、周辺を警戒した。

「フロッグレイド」一人が呟いた。

「逃げろ」言葉より足の方が早かった。

盾の陣を回り込むようにして国都方向へ一目散に逃走して行く。


 相手はBランクだが、一頭だけなら戦ってみたかった。

大人達もいるので負ける気がしない。

でも地響きからすると、三頭以上の可能性があった。

そうなると現状では無理。

撤収するしかない。

俺は急いで盾を収納した。

 シンシアが俺に言う。

「慌てる必要はないわ」ノンビリ口調。

「でも、こちらに向かって来てますよ」

「繁殖地の辺りで止まるわよ」

「そうなんですか」

「鳴き声や移動の方法からすると、これは完全に繁殖目的ね」

「・・・」

「普段は獲物を捕獲する目的があるから、忍び足で移動するの。

今のように派手に登場する時は、

完全に盛りのついた繁殖祭り状態なのよ」

「繁殖祭りですか。

そうすると今が繁殖期ですか」

 シンシアが言い淀む。

代わりにルースが答えた。

「獣は繁殖期があるけど、魔物はないの。

人間と同じで、盛って来たらヤルだけ。見境なくヤルわよ。

雄雌関係なく、雄同士とか、雌同士とかもね」悪戯っぽい言い方。

 俺はただ頷いた。

呆れたようにシェリルが言う。

「ヤルじゃなくて交尾でしょう」

「お上品に言えばそうかな」ルースが苦笑い。

「でしょう。

心配なんだけど、繁殖祭りが行き過ぎて、

こちらに向かって来るということはないのかしら」

 ルースが断言した。

「その点は大丈夫、ないわ。

あの辺りには冒険者やクランクリンが大勢、倒れているからね」

 要するに、餌場になっているということだ。


 魔卵回収や素材回収は諦め、俺達は急いで撤収した。

ルースの言葉通りに追跡はない。

フロッグレイクの鳴き声が聞こえぬ辺りに来て、ようやく足を止めた。

幸い、人影はない。

俺はみんなを一箇所に集めた。

戸惑い顔のシェリルとボニーにキャロルが言う。

「これから面白いわよ」

 俺はみんなに纏めて魔法を掛けた。

光魔法。

まず身体を身に着けて居る衣服ごと綺麗にするライトクリーン。

そして心身の疲労を取り除くライトリフレッシュ。

おまけで香り付け。

 慣れてきたので一人一人ではなく、集団で掛けられるようになった。

これにシェリルとボニーが更に戸惑った。

問い顔の二人に俺は釘を刺した。

「今見た事は忘れてね。

質問禁止、他人に吹聴しない、いいね」

 キャロルが笑いながら言う。

「それを破ると、ウンチの臭いを付ける呪いを掛けるそうよ」


 冒険者の服装からパーティ用のローブに着替えた俺達は、

何の問題もなく国都の東門を潜った。

そのまま冒険者ギルドに向かった。

途中、俺は収納から竹籠を取り出した。

採取した薬草を入れていた物だ。

それをキャロルに手渡した。

「これから急ぎで会う奴がいるから、これ頼むよ」

「デートでも約束していたの」

「そんな可愛いもんじゃないよ」

 俺は早足にみんなと別れて外郭の北区画へと向かった。

落ち合う場所は決めていなかったが・・・。

ウロウロしていると、俺の魔波に気付いたのか、呼び掛けてきた。

『待ったわよ。待ち草臥れちゃった』アリスの心底、疲れた声。

『地図はどうだった』

 外郭南区画スラムのボス、ザッカリーに描かせた三枚の地図だ。

『三軒とも概ね正直に描かれてるわね』


 西区の子爵家、東区の伯爵家、北区の侯爵家。

子爵家と伯爵家はザッカリーファミリーが妖精を売った先。

侯爵家は亡くなった先代が妖精を買ったという噂。

『屋敷の中に入ってないよな』

『私はそんな馬鹿な真似はしないわよ』

 信じられない。

『でも敷地内には忍び込んだよね』

『当たりっ、よく分かったわね』

 言葉と同時に太腿に衝撃。

振り返ると、白い子猫に体当たりを喰らっていた。

何時の間にか背後に忍び寄られていた。

『また子猫の姿か』

 妖精の姿ならランクが下の者には見つからないというのに。

『良いんじゃない』反省の欠片もない。


 俺はアリスをフードの中に隠して北門から出た。

目的は妖精を匿うダンジョン造りだ。

外に出ると再び探知スキルと鑑定スキルを連携させ、

ソロ活動用のローブに着替え、身体強化スキルで先を急いだ。

 国都は西方、北方、東方と三方を険しい山々で囲まれていた。

深い谷あり、急な河川あり、所々に沼地や断崖絶壁があり、

そして魔物が生息していて人間には厳しい環境にあった。

同時にそこは冒険者にとっては最高の環境でもあった。

多様な魔物が居るので魔卵や素材が豊富なのだ。

 山中に一歩足を踏み入れると、そこは薄暗い世界だった。

日光が枝葉に遮られてする所為だ。

それで静かな世界かと思いきや違った。

一山越えると五月蠅い、五月蠅い。

複数の魔物の雄叫びが交差していた。

探知スキルに魔物が引っ掛かる、引っ掛かる。

低ランクが多いが油断は出来ない。

数があれば、それは圧力なのだ。


 時折、冒険者パーティも引っ掛かった。

それほど多くはないが、魔物討伐を行っていた。

間近では右手100メートルほどの所で戦闘が繰り広げられていた。

冒険者五人に魔物三頭。

魔物のブレスに苦戦しているようだが、撤退する気配はない。

 フードから抜け出したアリスが俺に問う。

『冒険者のパーティが心配にならないの』

『ならないな』

 関わり合う時間が惜しいので俺達は次の山を駆け上がった。

脳内モニターに文字。

「この辺りの魔素の質量は最高です。

ダンジョンにも最適です」久々にダンジョン創造のお勧め。

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