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異世界ブギウギ。  作者: 渡良瀬ワタル
105/373

(アリス)29

 ザッカリーファミリーのアジトは直ぐに判明した。

奉行所の配下と覚しき者達が遠巻きに、

厳重な監視下に置いているのでソレと分かった。

歴史を感じさせるというよりも廃棄された建物だ。

 ファミリー側も気付いているようで、一触即発の気配がした。

危ない危ない。

巻き込まれたら俺まで火傷する。

他日を期したいが、アリスが承知しない。

『邪魔する奴等は蹴散らすのみよ』と意気盛ん。

 俺は誰の注意も引かぬように、周辺をそれとなく歩いた。

ついでに新しいスキル、透視を起動した。

これなら内部まで見通せる。

「スキルレベルが足りません」脳内モニターに残念なお知らせ。

思わず自分で、ガ~ンと呟いてしまった。

『真面目にやれよ』アリスから突っ込み。

そこで探知スキルをフル稼働。

アジト内の人数を把握。

人間の位置に細心の注意を払い、3D表示。

初見の建物なので内部には詳しくないが、

彼等の位置から大雑把に読み取った。


 二階建て。

一階部分には十二人。

二階部分には七人。

建物の外回りにも、それらしき人間を大勢見かけた。

何れも一癖も二癖もありそうな連中ばかり。

 俺はアジトから遠ざかった。

『逃げるつもりなの』アリスがフードの中で叫ぶ。

『信用がないな。まあ、任せてよ』

 俺は二つ向こうの辻を曲がった。

幸い人影はない。

即座に身体強化、風魔法でサポートしてジャンプ。

 傍の建物の屋根に飛び乗った。

そこからは一本調子。

慎重も躊躇もない。

勢いに任せて屋根から屋根へ飛び移った。


 アリスに注意した。

『尋問するから無闇に殺さないこと』

 探知スキルで確認した。

建物内部に怪しい動きはない。

外側も同じ。

誰にも気付かれてない。

 3D表示を頼りに屋根の上を歩いた。

ボスらしき男は周辺の連中の動きで、それとなく分かった。

守られるポジションにいるのは一人だけ。

 ボスの部屋の上に来た。

まず屋根に闇魔法、ダークボール。

下の天井部分にもダークボール。

空いた穴から飛び降りた。

 物音一つ立てずに現れた俺に室内に居た五人は唖然。

理解が追い付かないのだろう。

 アリスがフードから飛び出した。

妖精の姿ではなくて愛着のある子猫の姿。

変身スキルだと姿が露見するのだが、隠れるつもりは更々ないらしい。

その姿でもって攻撃した。

妖精魔法、ウィンドボールを放って五人を気絶させた。

それでも不満なのか、ご機嫌斜めな様子。

 俺は五人を鑑定した。

四人は護衛で、デスクに突っ伏しているのがボスと判明した。


「名前、ザッカリー。

種別、人間。

年齢、四十二才。

性別、雄。

住所、足利国山城地方国都住人。

職業、ザッカリーファミリーのボス。

ランク、B。

HP、140。

MP、45。

スキル、槍士☆☆、剣士☆☆、盾士☆☆」


 オークのような異様にでっかい身体。

加えてランクがB。

スキルも侮れない。

正面切って戦わなくて正解だったのかも知れない。

 俺はザッカリー目掛けて鍛冶スキルを発動した。

こういう使い方が適切かどうかは知らないが、まあ、相手は悪党。

失敗しても問題はない。

首輪をイメージ。

太くて重い鉄製の首輪。

無限に漂う魔素を集め、首輪に変換した。

 意外に簡単、相手の首に傷一つ付けずに取り付けた。

黒光りする鉄の首輪。

取り外し可能な魔道具の【奴隷の首輪】とは別物に仕上げた。


 一人も起きないので練習の一環として、

ついでに護衛の四人にも首輪を付けた。

 それを見ていたアリスに尋ねられた。

『鍛冶スキル持ちなら簡単に外せるの』

『たぶん無理かな。

術式を施した首輪なら道具だから簡単に解錠できるけど、

この手の単純な首輪だと逆に難しいと思う。

外すことを前提に作ってないから、手こずるんじゃないかな』

 鍛冶スキルはそもそもが素材を揃えることから始まる。

俺のはそれを省いた規格外のスキル。

余人に一朝一夕に超えられるとは思えない。

『このまま付けて置いても構わないのね』

『話し合いの結果次第・・・かな』


 最初にザッカリーが気が付いた。

寝惚けたように起き上がり、自分が置かれた状況に悪足掻き。

首輪を外そうと必死になった。

狭い隙間に指を差し込んで藻掻く、藻掻く。

ついには俺を睨み付けた。

「何の真似だ」怒鳴った。

 ボス部屋の声は外に漏れない厚い造作のようで、

廊下の護衛に動きはない。

 俺は風魔法で声音を変えた。

「質問がある」

「何様のつもりだ」

「俺様か、王様」

「巫山戯るな、これを外せ。

直ぐに外せば許してやる」

 アリスが攻撃した。

ウィンドカッターでザッカリーの頬を浅く削いだ。

「うっ、痛っ」

 頬に手をやり、血を確認するザッカリー。

憎しみを込めた目でアリスを見遣った。

「貴様、従魔か」

 ようやく存在に気付いたらしい。

俺とアリスを交互に見遣る。

 従魔、と言われたアリスが怒った。

もう一発、ウィンドカッターを放とうとした。

それを俺は慌てて止めた。

『これ以上、傷物にしたら答えが得られない』

 俺を睨むアリス。

『私は眷属よ。従魔なんかと一緒にされたら怒りたくもなるでしょう』


 俺達が答えないのでザッカリーが顔を強張らせた。

「お前達は何者なんだ」

「見たまんまだ」

 護衛の一人がモゾモゾと動き出した。

途端、アリスが無造作にウィンドカッターを放った。

立ち上がろうとする相手の額を縦に切り裂いた。

「あー」

 たぶん、致命傷ではないと思う。

髪と血が派手に飛び散り、男はそのまま崩れ落ちた。

大量に流れ出る血。

次いで肉片らしき物も。

もしかして頭部の奥にまで届いたのか。

 ザッカリーは状況をしっかり理解したらしい。

「何のつもりだ」

「質問がある。

正直に答えれば見逃す。

そこは約束しよう」

 ザッカリーは少し考えた。

「奉行所の者には見えないが」

「奉行所とは別口だ。

さあて、質問はいいかね」

「内容による。

知らないことは答えられない」

「心配するな。

お前が知っていることしか聞かない」

 ザッカリーなら立場からして妖精の売買に絡んでいる筈だ。

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