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Rainy Blue 〜雨の日の憂鬱〜

 ちょっと暗い始まりになります。読んでもらえれば幸いです。

 ―あの日から…雨がやまない。

 

 彼の口が、そう動いた。

 意味を分かりかねて問い返しても、彼は寂しげに遠くを見つめるだけ。

 何も映さない彼の瞳は何を見つめているのかしら。

 私にも同じものが見れたらいいのに……。



 それは寒い冬の夜のこと。

 一台のバイクが車と事故を起こした。

 ぶつかった衝撃で投げ飛ばされ、地面に叩きつけられた彼が見たのは冷たい千の雨。

 暗い夜空に赤いテールランプが滲み、雨はアスファルトを打つ。


 それが彼が見た最後の光景。

 最後の光――。

 あの日、雨は彼から光を奪った。

 そして…あの日から彼は暗闇に閉ざされ、彼の瞼には滲んだ雨が降り続いている。


 そう、絶望という名の涙雨が―…。


 けして止まない雨。

 永遠に彼の心から消えない残像。

 それは彼を苦しめ、彼の全てを変えた業。


 …でも、それすらも羨ましいと思ってしまうなんて。

 私は…嫌な女だわ。

 恨まれても、憎まれても、彼の瞼に残れるなら―。

 冷たい雨にさえ、そっと添っていたい。




 窓の外は雨―。

 彼はたった一人で悲しい雨音を聞いているのかしら。

 こんな日は私も薄暗い部屋で一人、壁にもたれてそっと彼を感じる。


 空虚な部屋。

 永遠に続く無音の世界に響く、痛々しい鼓動。

 壁越しに伝わる彼の痛み。

 彼の絶望を肌で感じ、私は一人涙する。

 きっと一人で泣けない彼のために。



 雨は、私を憂鬱にさせる。

 雨は、私に彼のことを教えてくれる。

 雨は、私の悲しい物語にほんの少しの優しさを注ぐ。


 そして…雨は苦みに似た幸せをくれる。



 …やっぱり、私は嫌な女だ。

 悲しい雨が優しいなんて―。

 この憂鬱すらも愛しいなんて―。

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