プロローグ |誘い《いざない》
オリジナル作品処女作です。
よければこれから、よろしくしてやってください。
青い空、白い雲、カンカンに世界を照らす太陽。
実にいい天気だ。あんまりに素晴らしい快晴ぶりから絵に描いたような取り合わせを感じ、現実感を削がれるがジリジリと肌を焼く感覚からやはり夢幻の類いではないと明確に感じ取れる。
―――つまりは全身に感じるこの痛みも。
体から血が抜けていくこの喪失感も。
変に落ち着いてるこの思考も。
全部現実って訳だ。
〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
「しっかし、なんで課題にネット使えないんだよ。嫌がらせか、疲れるわ」
カンカン照りの日光が降り注ぐ道路を挟んだ並木通りで、一人ブツブツと愚痴を垂れ流しながら歩く一人の男性がいた。
見たところ、この国では一般的な黒髪、黒目で、年の頃は十代後半から二十代前半程、体型は中肉中背、というよりは些か筋肉質であるだろうか。
容姿は可もなく不可もなくと言える程度には整っており、見方によっては好青年に見えるかもしれない男である。
……あくまでも悪態をついていなければであるが。
そんな、何処にでもいそうな青年はブツブツ呟きながらも、実際のところはあまり不満そうにも見えない。
どうやら、口では悪態をついていても、その対象である課題の条件に納得している節があるのだろう。
そのため、半ば以上無意識かつ適当に考え事をしていたのであろうが、如何せん、彼は周囲に注意を払っていなかった。
―――故に気付かない、猛スピードのトラックが自身に迫ってきていることに。
普段から通っている大学への道のりであったが故のルーチンワーク染みた注意力の散漫。
そんな、当たり前と言える行動には大きすぎる代償を彼は払うハメになってしまった。
〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
全身から感じる痛みで本来朦朧とするべき意識が何故か無駄に冴え渡り、彼は状況を明確に認識してしまう
(……うぅ、痛い。トラックに跳ねられると全身ベキャベキャになった感じになるんだな。腕が砕けてる気がするし、足なんて骨が突き出てて……あーあーグロい。胴体も痛いから内臓は破裂か骨刺さってそうだな。ははっ、なんでこんな冷静なんだか)
自らの場違いな気がする冷静さに疑問を抱きつつも、彼はどこか納得してもいた。
痛みが凄すぎてキャパシティを超えてしまったのか。
死に際がそういうものなのか。
彼自身がそういう人間だっただけなのか。
例えどれであったとしてもつまりはそういうこと。
もともとが"そういうもの"というだけのことだった。
(―――寒い)
彼は自らの体を抱くことも出来ずにそう思った。
それも当然。彼の命の証は彼から零れ落ち、彼の下に赤い大輪を咲かせている真っ最中なのだから。
そして、彼の意識は薄れてゆく。
流れ出した血液の量が限界を超えてしまったのだろう。
(……お、れ…………死ぬの…かぁ……)
そうして、彼の意識は闇に呑まれ―――
『―――おいで―――』
―――ることなく、彼の意識は光に包まれた。




