天国への切符
多少文章が歪んでおります。
閻魔大王はこう言った。
「今ここに集められた3万人の地獄行き確定者たちに朗報だ。いまから全員でジャンケンをして最後まで勝ち残ったやつに、天国への切符をやろう」
場にどよめきが走った。
俺はやった!と思った。同時にふざけるなとも思った。
たった1人?
3万人の中でか?
そんなの無理に決まってるだろう。3万分の1の確率ってそうとう無理ゲーじゃないか!
俺が心の中で叫んだ。
閻魔大王は慌てふためく3万人に見かねたのか、少しやさしめな口調で言った。
「まぁまぁおちつけ諸君。確かに3万人中1人というのは少なすぎるかもしれない。だがな、それであきらめてしまっては確率はゼロだぞ?やってみる価値はあるんじゃないか?」
まぁ確かに。という声がところどころから上がる。自分もその中の一員ではあった。
だが、もう1人ぐらい増やしてくれてもいいんじゃないかと少々納得がいかない。
もちろんそんなことに閻魔大王は耳を傾けなかった。それどころかさっさと済ませてしまいたいような感じでこぶしを振り上げる。
「みんなー、準備はいいかー?」
これを合図にまばらまばらと3万本の腕が上がり始めた。俺もやらなくてはととっさにグーを作る。
「まずは、俺が全員の相手をする。勝った奴だけがここに残れ。」
まずは3分の1からか…。
「さーいしょはグー!ジャンケンポン!」
閻魔大王の最初の一手は、パー。
俺は、チョキだった。
「…勝った。」
「おーし、チョキ以外全員さっさと地獄に行けー。」
周りのやつらがぞろぞろと地獄の門へと足を運ばせ始めた。1回戦で奇しくも負けた者たちだ。
閻魔大王はそれには気にかけず、すぐに2回戦へと移った。
「まだ1万人ぐらいいるなー。ジャーンケーン、ポン!」
ついに二人だ…。
何と俺は決勝戦までこぎつけることができた。
ここまでで1万5千分の1の確率。次に勝てれば3万分の1、つまり優勝。天国への切符は俺のものになる。
相手はメガネをかけたいかにも東大にいそうな奴だった。万年ニートだった俺にとって最大の敵である。
リア充め…。
俺は自分のこぶしを見つめた。
絶対勝つ。
メガネ男も手に全神経を集中させている。
「最初はグー…」
俺は合図をかけた。
自分の手は緊張で汗でびっしょりだ。まさに手に汗握る展開である。
彼も額から汗を流し始めた。
「ジャンケン」
「ポン!」
俺はチョキ。相手はパー。
「…勝った。」
男の顔が歪んだ。
いかにも悔しそうな顔で、いつ泣いてもおかしくないような感じだった。
「アハハ……」
思わず笑みがこぼれる。
おれは歓喜の有頂天だった。
「よっしゃああああああああああああああああ!ざまあみろ!!俺の勝ちだ!インテリなお前とは違って、俺はニートだ!これがどういうことかわかるか?お前はニートに負けたんだよ!しかもじゃんけんで。みじめだなぁ、みじめみじめ。今やお前の背中に乗るのは俺だ!俺の背中にお前じゃないんだ!わかったか!勝ったぞ!俺は勝ち組になれたんだあああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」
はしゃぐ俺。まるで子供のようだ。
これで天国行きは決まった。
「大王様!どうか私に切符をお授けください!」
俺は閻魔大王にひざまずき、まるで祈りをささげるような格好になる。
「あ、君。さっきこの子に悪口言ったよね?あなた地獄行きね」
調子にのるなよ♪