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青春挽歌  作者:
1/12

どぉもです、銃です。

はい、これ女子向けです。(どちらかといいますと腐女子かも…)

典型的な少女趣味展開をここぞと盛り込みすりこみした作品となっております。


例のごとく、あいもかわらず文脈つじつま展開めちゃくちゃです。

昨年の夏、無クーラーの部屋で狂気のごとく紡ぎ上げた代物です。


まぁ銃がうだった頭で学園物書くとこうなると思って下さい。

ではでは…。

                                 銃.


何となくこんな感じで表紙絵描いてみました、が、色々失敗ですねぇ…。

面倒でなかったらいつかリベンジしたいです。

挿絵(By みてみん)


華咲ク乙女ナオヨロシ。

黒キ三ツ編ミナオヨロシ。

()ハ清ラナせぇらぁナオヨロシ。


以上三カ条、マサニ参加状トミナス

学園ノ姫トシテ君臨セヨ。



青春挽歌




「……。」


真菜月みするはぼんやりと校庭に立っていた。

真菜月みするは女学生だった。

まだ昼間の熱の香るそよ風に、今時珍しい長く細い三つ編みを遊ばせている。

半袖の夏の「せぇらぁ」が、炎のように真っ赤な夕暮れに染まっていた。

誰もいない校庭にぼんやりと立つ女学生。

いくら女学生といえども一人制服で校庭に立つ姿はいささか滑稽だった。

真菜月みする自身もそれは感じていた。

そもそも彼女は――――


「ここ……どこ?」


この学校の生徒ではなかった。


「えっと……あたし……さっきまでどうしてたっけ…?」


とりあえず真菜月みするは自分の行動を振り返る事にした。

とりあえず真菜月みするは校庭の真中から校舎に向けて歩く事にした。

次第に先程までの記憶が蜃気楼のように頭の中に浮かび上がる。


気持ち悪い男がいた。

脂ぎった中年だった。

真夏の盛りにも関わらず外套を羽織っていた。

そうだ、帽子の縁をわざとらしく触るその手は手袋までしていた。

黒の革手袋。

白い長そでに濃茶の毛の背広まで見えた。

どう見ても秋の暮から冬の装いだった。

でも脂は浮いているのに汗は全く欠いていなかった。

それも何だか気持ち悪かった。

そうだ、その男は何か呟いた。

そう、確か………


「良いねぇ、ぜひ君を飼いたいなァ。」


鳥肌が体中に走った。

その男の台詞そのものもあったけれど、そう言ってにたりと嫌らしく笑った男の歯が

赤と黒の交互で染め上げられていたからだ。


そうして、気づいたら真菜月みするはこの見知らぬ校庭に立っていたのだった。



何とも古い校舎だった。

どう見ても木造だった。

玄関の観音扉にはめ込まれた歪みのある飴色の硝子に真菜月みするの姿も歪んで映る。

そっと両手で押してみると意外にも音も無くその扉は真菜月みするに道を示した。

前面に広がる空の靴箱の群れの先に奥へと続く廊下が見える。

遠くでかすかに聞こえる(ひぐらし)と烏のさえずりの他にそこに音は存在しなかった。

そこには、無人の廃校のような空気が充満していた。


(……なんか、わからないけどとりあえずここから出よう。)


真菜月みするは来た道を取って返した。

取って返したといってもそのまま校庭の真ん中に戻った訳ではけしてない。

真菜月みするは校庭の端を歩きその先にあるであろう校門を目指した。

目指した、目指した、目指した…・・・・・・・


気づけば校庭を一回りしまた校舎の玄関口に戻っていた。


「なんで…?」


真菜月みするは思わず呟いていた。

そう、校庭の何処にも校門どころか小さな通用門すらも存在していなかったのだ。

続くのは「ぼぉる」が外に出ていくのを防ぐかのような高い「ふぇんす」ばかり…。


「……どうしょう。」


―――――――。


「え…?」


思わず真菜月みするは音のした方に顔を向けていた。

それは先程一度は中に踏み込んだ校舎の方から聞こえた音だった。

ここに来て初めて耳にする人工的な音。

涼やかな、風鈴のように寂しく響く音だった。


(………。)


真菜月みするの足が自然と校舎の中へと向かっていた。

普段の彼女ならば、こんな無人の廃校の様な場所へは決して足を踏み入れず迷わず「ふぇんす」をよじ登りに向かっていた事だろう。

けれど真菜月みするはそれをしなかった。

普段の状況と何かが違う事に彼女はすでに気づいていた。



真菜月みするは土足のまま、また不思議ときしまない木造の廊下を進んでいった。

別に普段から彼女は校内を土足で歩くような習慣がある訳ではない。

その廊下は真菜月みするがその小さな足跡を残す以前に、沢山の大小様々の土足の跡で彩られていたからだ。


不良がたむろしている所なのかもしれない。


そういう考えが頭をよぎらなかった訳ではない。

けれど真菜月みするは少しの恐怖心も覚えず、校舎の奥へと進んでいった。

階段を見つけると、真菜月みするの足は自然と上階に足を進めていた。

そちらから気になる音がしたような気がしたからだ。


(おかしい…。)


恐怖心を覚えない真菜月みするにも、その違和感には不思議を覚えていた。

外から見上げた校舎は、3階建てにしか見えなかった。

けれど今確実に3階以上の上階に足を踏み入れている。

階段の途中の踊り場の窓の数が、外から見上げた窓の数と一致していない。

結局6階に達したところで階段は終わりを見せていた。


やはりそこにも人の気配はしない。

炎の様だった夕暮れの日差しもわずかに暗く沈み、夜の香りをはらんでいる。

真菜月みするは6階の廊下を奥へと進んでいった。


人気のない木造の校舎が、一日の終わりを告げる鈍色の朱に染め上げられる様は、何とも心の深くを締め付けられる切なさがあった。


5つ程の教室の前を通り過ぎると、そこは行き止まりだった。

おそらく屋上へと続く階段がその奥にあると思われる非常扉のようなものが存在したが、建てつけが悪いのか錆びついているのか、押しても引いてもその扉は開かなかった。



「……えいっ!」


真菜月みするはとどめとばかりに、その開かずの扉を蹴りつけていた。

真菜月みするは小柄で大人しめな容姿に似合わず、実は意外とお転婆さんであった。

ばぁんっという大きな音がこだまし、彼女の足にその衝撃の余韻を残すばかりで、結局開かずの扉は開かずの扉のままであった。


――――――。


どこかの教室からその音はした。

その途端、真菜月みするの興味は非常扉からその音の在処へと移っていた。

そもそも真菜月みするは、この音の在処を求めていたからだ。


真菜月みするは非常扉から二つ程手前の教室の前に立っていた。

扉を横に押し開くと、昼の熱を残した夏の風が彼女の横を通り過ぎていった

全ての窓が開け放たれ、黄ばんだ「かぁてん」が踊るように波を見せている。

真菜月みするはすぐにその教室の違和感に気づいていた。

それは教壇の上に置かれていた。

花瓶に活けられた彼岸花。

夕陽の光の中でもその鮮やかな朱が見て取れる、つまりここ最近誰かの手によって生けられたものである事は間違いない。

真菜月みするは無人の様な廃校で初めて人の気配を感じた。


真菜月みするは教壇へと進み、花瓶を目の前にし彼岸花と対峙していた。

そっと鼻先を華弁に近づける。


(あれ……?)


彼岸花は無臭の華といつか聞いた。

真菜月みするはもう一度彼岸花に顔を寄せた。

彼岸花は無臭の華といつか聞いたように、やはり無臭であった。

けれど真菜月みするは一瞬だけ、雲一つない夏空のようなさわやかさをそこに感じていた。

目の前の色鮮やかな彼岸花、整然とこちらを向く無人の机と椅子、終業式や卒業式を思い起こさせるような何の掲示もない殺風景な壁の四面、目をつむれば耳に触れる夏の風と「かぁてん」のなびき。

真菜月みするはしばらく、その「のすたるじっく」な切なさに心を揺らしていた。

気づけばぼんやりと真菜月みするは、教卓の上に載せた両手の上に顔を乗せ、教室内を眺めていた。


真菜月みするは無防備だった。

だから彼女は、その時自分の身を襲った衝撃的な感触に、身を取り繕う事が出来なかった。

予期しなかったあまりの衝撃に彼女は


「ギヤァあァァぁ~~~~~ッ!!」


乙女らしからぬ獣のような絶叫を上げていた。



衝撃は左足のふとももに走った。

衝撃といっても痛みではない。

真菜月みするは、自分の経験の中からその感触を言葉で表す事が出来た。


真菜月みするは犬を1匹飼育していた。

名前は「だん」、けれど雌。

薄い茶色の少し「めたぼ」な毛長犬だ。

ちょうど真菜月みするの衝撃は、その「だん」が彼女の帰宅を喜びその愛情表現として行うべろ舐めと同じものであったのだ。


教卓でべろ舐めは普通ありえない。

彼女は今まで不思議と感じていなかった恐怖を心一杯に溢れさせ、教卓から飛びのいた。

教卓のすぐ後ろの黒板に背中がぶつかる。

真菜月みするは教卓の中を凝視した。


「あなた、誰……?」


教卓の中には、何と一人の青年が体を押し込めるようにして座っていた。

半袖の「わいしゃつ」に黒い「すぼん」を膝の少し下まで捲り上げて穿いている。

典型的な夏の男子学生服を着用していた。

緩やかに孤を描く眉の下の、とろんとしたいたずらな黒い瞳が真菜月みするを捉えている。

柔らかそうな黒髪の毛が上品な猫を思わせた。


(け…結構……美形だ…。)


真菜月みするは突如ふつふつとした淡い乙女心を押しとどめ、すぐに自分のされた事を思い出しその青年を詰問した。


「あっ…あなた!そこで何してるの!

自分が何したかわかってる?今のは立派なセッ…セクハラよ!」


「せくはら?」

言葉の意味がわからないのか、その青年は不思議そうに真菜月みするを見上げた。

無防備なあどけないその表情に、また真菜月みするの乙女心がわずかに顔を出した。

その乙女心のとどめを刺すかのような満面の笑みを、青年は浮かべる。

ここまでは良かった。しかしその青年はそこから最悪の変態発言を口にしていた。


「昼寝してたら目の前にいきなり美味しそうな足があったから、思わず舐めちゃった。

ごちそうさま、美味しかったよ。」


一瞬乙女の夢を見た真菜月みするではあったが、彼女はまだ花も恥じらう15の乙女である。

決して痴女ではない。

いくら美男といえどもこのような蛮行は彼女の淑女精神が許すものではなかった。


「美味しって…・・あのねッ!」


真菜月みするが教卓の青年にまた一段と声を荒げようとした時、彼女のその可憐な声よりもさらに荒々しい多勢の気配が遠く階下から響いてきた。


「な、何…?」


その足音の重さは男児を思わせる。

せまる多勢の男児の足音。

真菜月みするは恐怖を覚えた。

気づけば校舎を疲れた様に漂っていた無人の気配が消えている。

今はもう教卓から出て隣に立つこの青年の出現とともに、何かが大きく変わった事に真菜月みするは気づき始めていた、


「あーあ、大声出すから気付かれちゃったじゃない…。」


隣でぼそりと半眼に薄く笑みを浮かべて呟く青年。

誰にと真菜月みするが尋ねるより前に、その教室の扉は荒々しく開け放たれていた。

「そこで何してるッ!

っお前は……ッ!」


乱入した複数の学らん姿の体育会系男児達が、青年と真菜月みするを見てそれぞれ思う所を口にしていた。



「入橋圭ッ!」

「入橋ッ!」

「女だッ!」

「「姫」だッ!」



(いるはし、けい……。)

真菜月みするは隣に立つ青年、入橋圭を見上げた。

そして自分を指さし誰にともなく口にしていた。


「姫……?」


その真菜月みするの呟きを合図にするかのように、筋骨たくましい男児達は真菜月みする目指して飛びかかってきた。


「姫は俺のものだッ!」

「俺のだッ!」

「いや「王子」になるのは俺だッ!」


(王子……?)


真菜月みするが一瞬乙女の妄想世界でしか普段耳にしないその言葉を反芻していると、その一瞬のすきに入橋圭は真菜月みするの腹部に自らの腕を通し、そのまま窓際に飛び退っていた。

真菜月みするが驚き入橋圭を見上げると、もう一方の指先が衝撃のふとももに触れている。


「ちょっ…!」

「悪いな、この姫はもう俺のもの。」


(はッ?????????)


真菜月みするが己の理解値を超えた時、彼女の体は教室内にはすでになかった。

一瞬の「かぁてん」のゆらめき、遠ざかる男児の怒声、そして空が見えた。

淡く星が瞬き始めている。

それとよく似た淡い光を自分のふとももに見た気がする。

そして自分の足先が空を泳いでいた。


(なんで、足が空にあるの………?)


加速する落下感の中、真菜月みするの意識も加速的に落下した。



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