表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/7

第1話 奥寺タクミは探索者


「――ようやくお出ましか」


 新宿大空洞ダンジョン、その深層にて。

 俺、奥寺タクミは剣と盾を構えながら言った。


 黒光りする鱗に包まれた、禍々しい魔力を放つ黒竜。

 深淵竜(アビス・ドラゴン)、ダンジョン連合でSランク指定されている危険なモンスターであり、本日の討伐目標(ターゲット)

 

「全く、手間取らせるな」


 出会うのに結構苦労したもんだ。

 何せコイツは深層にしか出ないうえ、出現エリア周辺のモンスターを全滅させてから現れるという特殊仕様。

 

「ま、準備運動にはなったけどな」


 ゴブリンキング、オーガナイト、アーマーリザードなど……有象無象のモンスターの屍の中、俺は呟く。

 深淵竜(アビス・ドラゴン)はその巨躯を起き上がらせ、鋭い眼光で睨みつける。


「んじゃ、始めるか」


 ゴガアアアアアアア!!

 深淵竜(アビス・ドラゴン)は咆哮を上げながら突進してくる。

 その黒い鎧のような外見通り、ドラゴン系モンスターには珍しい物理攻撃を多用してくるのが特徴だ。


 俺は盾を構え、その攻撃を迎え撃つ(・・・・)


 ドオオオンッ!

 深淵竜(アビス・ドラゴン)の全体重が込められた突進攻撃が襲う。

 ダンジョンが地震のように揺れるほどの威力。

 普通の探索者なら、これを喰らった時点で命は無いだろう。


 だが、俺がダメージを負うことはなかった。


 盾での防御によって、その全てを受け止めた(・・・・・)からだ。


 足跡を見ても、その場から一歩も動いていないのが分かる。

 

 グオオオ!?

 深淵竜(アビス・ドラゴン)は、ほんの少し動揺した様子を見せた。

 そりゃそーだ、コイツからしてみれば俺なんてアリみたいなもんだ。

 今の突進で簡単に始末出来ると思うよな。

 でも、あいにくだけど俺はそんな(やわ)じゃない。


「――俺は盾役(タンク)だからな」


 盾役(タンク)、盾の防御力を利用した粘り強い戦い方が特徴の前衛職だ。

 ある程度技術を磨けば、このくらい(・・・・・)の芸当は出来る。


「ほらどうした、かかってこいよ」

 

 グオオオオ!!

 深淵竜(アビス・ドラゴン)は盾に接触したまま、無理矢理力を加えていく。

 しかし、俺をこの場から動かすには余りにも力が足りなすぎる。


 ここで俺はスキルを発動させる。

 

「スキル『反射(リバース)』」


 ドオオオン!!

 俺が発動を宣言すると、盾から衝撃派が発せられ、深淵竜(アビス・ドラゴン)に直撃する。

 『反射(リバース)』は、盾に蓄積した物理攻撃のエネルギーを放出するスキルだ。

 スキルを使う直前、深淵竜(アビス・ドラゴン)の突進攻撃を盾で受け止めていたため、それがそのまま本人に返ってきたことになる。

 

 衝撃波を顔面に受けた深淵竜(アビス・ドラゴン)は思わず仰け反るが、ギリギリで踏み止まる。


「すごいな、流石はSランクってとこか」


 今の一撃で頭に血が上ったのか、続いて深淵竜(アビス・ドラゴン)は両手の爪を使った攻撃を繰り出す。

 とめどなく浴びせられる巨大な爪の猛攻。

 俺は再び盾を構え、ガード体勢で向かえる。

 いずれの爪による狂撃も、盾で問題なく防ぎ切る。


 そして、


「『反射(リバース)』」


 頃合いを見て、『反射(リバース)』を発動させる。

 爪攻撃のエネルギーが込められた衝撃派は、深淵竜(アビス・ドラゴン)の黒鱗をズタズタに引き裂く。

 『反射(リバース)』には、吸収した際の攻撃を衝撃派で再現する特徴がある。

 今回は爪による攻撃だったので、それがそのまま反映されたわけだ。

 

 グオオオオオオオオオ!!!!

 深淵竜(アビス・ドラゴン)は損傷により咆哮を上げると、口を大きく開ける。


 すると、深淵竜(アビス・ドラゴン)の顔の前に、巨大な黒い炎の塊が形成されていく。


「あれは……」


  一つ覚えがあった。

 深淵竜(アビス・ドラゴン)には、自らが命の危機に瀕した時に使う『奥の手』とも言える技があると。


 確か名前は……『黒炎弾(こくえんだん)』って技だったっけ?

 何でも、着弾地点から半径50メートルを焦土と化すくらいの威力があるって聞いたな。


「多分これのことだな」

 

 俺は呑気にそんなことを呟く。

 例によって、俺は盾を構える。


 グオオオオオオオ!!

 深淵竜(アビス・ドラゴン)の口から『黒炎弾(こくえんだん)』が放たれる。

 大砲のように撃ち出されたそれは、俺を目掛けて超高速で向かってくる。

  

 ドオオオオオオオオオン!!!!

 『黒炎弾(こくえんだん)』が俺に直撃する。

 辺りに黒炎が散らばり、放置されていたモンスターの死骸はもれなく黒炭と化した。


 ダンジョンの壁やら床やらも黒炎が燃え移って、まさに地獄絵図と言ったところか。

 

 こんな強力な攻撃を喰らったのは久しぶりだったかもしれない。


「俺じゃなかったら間違いなく死んでるぞ」

 

 俺は構えた盾を戻し、周りを見渡す。

 探索者界隈で危険視されている深淵竜(アビス・ドラゴン)、その奥の手ともなれば一度身を持って味わうのが盾役(タンク)の性だ。


 けど、案外余裕で防げちゃったな。


 少なくとも、盾ごと俺を焼き尽くせるほどの威力ではなかったようだ。

 

「安心した、次に深淵竜(アビス・ドラゴン)と戦うようなことがあっても、俺の防御力は通用する」


 俺は一歩、また一歩と深淵竜(アビス・ドラゴン)との距離を詰める。

   

 グオオオオ……!!

 深淵竜(アビス・ドラゴン)は再び、口中に黒い炎を溜める。

 なりふり構わないその姿は、心なしか焦っているようにも見えた。

 また同じ手を使うのか、それ使っても勝てないって分かっただろうに……。

 まあ奥の手って言うし、これ以上の攻撃は無いんだろうな。


「いいよ、付き合ってやる」


 グオオオオオオオ!!

 再び撃ち出された『黒炎弾(こくえんだん)』。

 俺は盾で防御姿勢を取るが、そのまま耐えるようなことはしない。

 このまま守ってるだけじゃジリ貧だし、かと言って『反射(リバース)』は物理攻撃(・・・・)にしか使えない制限がある。


 こんな時に最適なスキルがある。


「スキル『矢返し』」


 俺は宣言すると、飛来した『黒炎弾(こくえんだん)』を盾で弾き飛ばす(・・・・・)

 

 打ち返された巨大な黒い炎は、深淵竜(アビス・ドラゴン)の頭に吸い込まれるように向かっていき……。


 ドオオオオオオオオオン!!!!

 今度は深淵竜(アビス・ドラゴン)を中心に『黒炎弾(こくえんだん)』が炸裂する。

 『矢返し』は、矢を始めとした飛び道具や魔法攻撃を盾で跳ね返す、盾役(タンク)にしか使えないスキルの一つだ。

 今みたいな『黒炎弾(こくえんだん)』のような遠距離技も対象に含まれる。


 ズシィィンッ!

 身体が燃え盛ったまま、深淵竜(アビス・ドラゴン)は仰向けに倒れる。

 流石のSランクモンスターも、自らの最終技を顔面に喰らって応えたようだ。


 俺はすかさず深淵竜(アビス・ドラゴン)に飛び乗り、更にスキルを起動させる。


「スキル『弱点看破(ウィークポイント)』」

 

 『弱点看破(ウィークポイント)』は文字通りモンスターの弱点を見つけるスキル。

 接近した状態じゃないと使えないが、盾役(タンク)の低火力を補う大事なスキルだ。

 目に照準が映し出され、それは深淵竜(アビス・ドラゴン)の左胸を指し示した。

 

「ここだな」


 俺は手に持った剣――ブロードソードを思い切り突き立てる。

 ざくり、と肉が裂ける音が耳に届くと、深淵竜(アビス・ドラゴン)はグオオオ……と最期の雄叫びを上げ、動かなくなった。


 討伐完了、

 今日の目標を終え、清々しい気分だ。


「ふい〜」


 俺は仰け反らせ、身体を伸ばす。

 スマホを確認すると、画面には同接『1人』の表示。


 ピロン!

 遅れて、コメントが書き込まれる。


"《秋月ユキト》タクミおつかれ〜、やっぱ壮観だな、お前のダンジョンアタックは!"


 俺は後ろをふわふわ浮かぶ、白い球体に目を向ける。

 これは撮影ドローン、俺のダンジョンアタックを配信するための物だ。

 

「観てたのか、ありがとなユキト」


"《秋月ユキト》当たり前だろ、お前の配信知ったら、他の探索者の配信じゃ物足りねーよ"


 俺はドローンに向かって話しかけると、すかさずユキトからコメントが返ってくる。


 ここで、1番気になる質問を投げかけてみた。


「で、どうだった、お前以外に俺の配信観てた人はいたか?」


"《秋月ユキト》あーそれなんだけどな……"


 ユキトはコメント越しでも分かるくらい、口ごもった様子を見せる。


「そうか……」


 俺は落胆する。

 どうやら今日(・・)もダメだったみたいだ。

 スマホで確かめてみても、案の定チャンネル登録者数は2人のままだった。

 



 俺、奥寺タクミは探索者であり、盾役(タンク)であり、登録者数2人の……底辺配信者だ。


 ※本日18時頃に2話目投稿予定です!

【※読者の皆様へ】


「面白い!」

「続きが気になる!」

と思った方は、ブックマーク、評価をしていただけると幸いです! 


広告下の評価欄にお好きな星を入れてください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ