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添付‐第9話 新商品 量産移行依頼書 兼 製造仕様書

新商品 量産移行依頼書 兼 製造仕様書

宛先: 製造部 部長 宮本 武 様

CC: 品質管理部 部長 鈴木 誠一郎 様、代表取締役社長 高梨 英治 様

発信元: 開発部 部長 織田 浩之

発行日: 2025年 7月 16日 (Project V - 17日目)

1. 件名

新商品(コードネーム: PV-28)の量産移行、および量産試作の開始依頼

2. 目的

品質管理部による最終承認(2025/7/15付)を受けた新商品のレシピと関連技術情報を開発部から製造部へ正式に移管する。本書に基づき、製造部にて量産試作を開始し、45日以内の市場投入に向けた生産体制を確立することを目的とする。

3. 最終製品仕様

・項目: 製品名

 ・仕様値: 新・福あかりまんじゅう

 ・測定方法: -

・項目: 製品重量

 ・仕様値: 50g ± 2g

 ・測定方法: 電子天秤

・項目: 外径

 ・仕様値: 48mm ± 0.3mm

 ・測定方法: 三次元寸法測定器

・項目: 糖度 (Brix)

 ・仕様値: 55.0% ± 0.5%

 ・測定方法: デジタル糖度計

・項目: 水分活性 (Aw)

 ・仕様値: 0.85 以下

 ・測定方法: 水分活性測定器

・項目: 硬さ・物性

 ・仕様値: 3.5 N ± 0.2N

 ・測定方法: テクスチャーアナライザー

4. 標準レシピ(1バッチ:約500個分)

皮生地

・材料名: 小麦粉(宝笠)

 ・配合比率: 100

 ・重量: 10.0 kg

 ・サプライヤー/規格: 横浜製粉

・材料名: 上白糖

 ・配合比率: 80

 ・重量: 8.0 kg

 ・サプライヤー/規格: 日新製糖

・材料名: 鶏卵(LLサイズ)

 ・配合比率: 50

 ・重量: 5.0 kg

 ・サプライヤー/規格: 相模ポートリー

・材料名: 水

 ・配合比率: 20

 ・重量: 2.0 kg

 ・サプライヤー/規格: -

白あん

・材料名: 新ブレンド豆PV-28

 ・配合比率: 100

 ・重量: 15.0 kg

 ・サプライヤー/規格: 横浜グローバルフーズ

・材料名: グラニュー糖

 ・配合比率: 60

 ・重量: 9.0 kg

 ・サプライヤー/規格: 日新製糖

・材料名: 醤油麹

 ・配合比率: 0.5

 ・重量: 75 g

 ・サプライヤー/規格: ヤマサ醤油(特注品)

・材料名: 沖縄の塩

 ・配合比率: 0.1

 ・重量: 15 g

 ・サプライヤー/規格: 青い海株式会社

5. 製造工程における重要管理点(Critical Process Parameters)

宮本部長、および製造部の皆様へ。

このレシピは、ラボレベルでは完璧な数値を叩き出しましたが、量産化にはいくつかの「壁」が存在します。特に以下の点は、従来品と全く異なる特性を持つため、最大限の注意を払っていただきたい。

【最重要警戒事項】生地の物理特性について

・極めて高い粘性:

新ブレンド豆と醤油麹の酵素作用により、生地の粘性が従来品と比較して約30%高いことがデータで確認されています。ラボの小型ミキサーでは問題ありませんでしたが、工場の大型ミキサーで混練した場合、想定以上の負荷がかかり、生地がダマになったり、逆にグルテンが破壊されたりする可能性があります。

・温度変化への感受性:

生地温度が30℃を超えると、粘性が急激に上昇し、成形ノズルの詰まりの原因となります。混練時の摩擦熱の管理が、歩留まり率に直接影響します。

工程別注意点

・① 生地混練工程:

 ・推奨方法: 低速で10分、材料を馴染ませた後、中速に切り替え5分。高速での混練は絶対に避けてください。

 ・管理温度: 混練終了時の生地温度を28℃以下に維持すること。

・② あん練り上げ工程:

 ・焦げ付きリスク: メイラード反応を抑制するため、最終練り上げ温度は95℃を上限とします。これを超えると、雑味(焦げ付き)が発生し、後味のキレが失われます。

・③ 成形・焼成工程:

 ・ノズル詰まり: 前述の通り、粘性が高いため、ノズル径の微調整、および定期的な清掃が必須となります。

 ・焼成時間: 従来品より30秒短い時間(XX分XX秒)で、内部まで火が通ることを確認済みです。

6. 開発部からの所見

この「試作二十八号」は、我々開発部の技術と意地を結集させた、現時点での最高の製品です。しかし、これを「商品」としてお客様に届けることができるかどうかは、製造部の皆様の知恵と経験にかかっています。ラボのデータが全てではありません。量産試作で発生するであろう、あらゆる問題を乗り越えるため、開発部は全面的に協力することを約束します。共に、この壁を乗り越えましょう。

7. 承認

・役職: 開発部長

 ・署名: 織田 浩之

 ・日付: 2025/07/16

・役職: 品質管理部長

 ・署名: 鈴木 誠一郎

 ・日付: 2025/07/16

・役職: プロジェクト最高責任者

 ・署名: 高梨 英治

 ・日付: 2025/07/16


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