添付‐第8話 新商品開発プロジェクト マスタープラン
【極秘】新商品開発プロジェクト マスタープラン Ver.3
コードネーム: 『Project V(Victory)』
1. プロジェクト概要
本プロジェクトは、株式会社みらい銀行より提示された追加金融支援の絶対条件である「45日以内の新商品開発および市場投入、ならびに初月売上目標の達成」を完遂し、会社の存続を確定させることを唯一無二の目的とする。これは単なる商品開発ではない。福あかり本舗の再生能力を内外に示す、会社の未来を賭けた、全社一丸の総力戦である。
2. プロジェクトの大方針
・スピード最優先:
全ての意思決定は、スピードを最優先する。品質に関わらない、あるいは軽微な問題については、各部門リーダーの裁量で即断即決する。
・情報の一元化と透明性:
プロジェクトの進捗、課題、各部門のデータは、社長室に設置する「作戦本部」のホワイトボードにリアルタイムで可視化し、全リーダーが常に全体像を把握できる状態を維持する。
・ゲート管理プロセスの導入:
各フェーズの移行は、必ず全リーダー参加の「GO/NO-GO合意会」を経て決定する。これにより、手戻りを防ぎ、品質を担保しながら、プロジェクトを推進する。
・部門間の壁の完全撤廃:
本プロジェクトにおいては、部門間の利害や縄張り意識を完全に排除する。開発、製造、品質管理、営業は、一つのチームとして、互いの領域に積極的に踏み込み、知見を共有し、課題解決にあたる。
3. フェーズ1:緊急開発フェーズ(1日目〜15日目)
絶対目標:
「コスト」と「味」の二律背反を克服した、究極のレシピを15日間で完成させる。
KPI:
・【開発部】: 試作品の製造原価率68%以下を達成。
・【品質管理部】: 味覚センサーによる主要5項目の目標値クリア。
・【営業部】: 新商品のコンセプト、価格設定、ターゲット顧客を確定。パッケージデザインの方向性を固める。
マスタースケジュール:
・タスク名: 新ブレンド豆の最終選定・発注
・担当: 開発/購買
・期間: 1-3日目
・タスク名: パッケージデザインコンセプト確定
・担当: 営業/開発
・期間: 4-6日目
・タスク名: 第一次試作&品質評価①
・担当: 開発/品管
・期間: 1-6日目
・タスク名: 第二次試作&品質評価②
・担当: 開発/品管
・期間: 10-15日目
・タスク名: 【ゲート審査】最終レシピGO/NO-GO合意会
・担当: 全員
・期間: 15日目
4. フェーズ2:量産体制構築フェーズ(16日目〜30日目)
絶対目標:
ラボレベルの「奇跡のレシピ」を、工場の誰が作っても完璧に再現できる「魔法の仕組み」へと落とし込む。
KPI:
・【製造部】: 量産試作ラインでの不良品率3%以下を達成。1時間あたりの目標生産数(500個/h)をクリア。
・【品質管理部】: 「標準作業手順書(SOP)」の初版を完成させる。
・【営業部/開発】: パッケージの最終デザインを入稿し、資材メーカーに発注する。
マスタースケジュール:
・タスク名: 量産試作①&品質評価③
・担当: 製造/品管
・期間: 16-18日目
・タスク名: 【ゲート審査】量産試作① GO/NO-GO
・担当: 全員
・期間: 19日目
・タスク名: 量産試作②&品質評価④
・担当: 製造/品管
・期間: 22-24日目
・タスク名: 【ゲート審査】量産試作② GO/NO-GO
・担当: 全員
・期間: 25日目
・タスク名: パッケージ最終デザイン入稿・発注
・担当: 開発/購買
・期間: 28-30日目
・タスク名: 主要取引先への説明行脚
・担当: 営業/高梨
・期間: 19-30日目
5. フェーズ3:市場投入フェーズ(31日目〜45日目)
絶対目標:
完璧な商品を、完璧な状態で市場に届け、銀行を沈黙させる「結果」を出す。
KPI:
・【製造部】: 初回生産ロット(5万個)を、不良品率1%以下で生産完了。
・【営業部】: 発売初日の売上目標(1,000万円)を達成。
・【品質管理部/購買】: 発注した包装資材(5万個分)の受け入れと品質検査を完了。
マスタースケジュール:
・タスク名: 初回ロット生産
・担当: 製造
・期間: 31-40日目
・タスク名: 包装資材(5万個分)最終納品・検品
・担当: 購買/品管
・期間: 36-40日目
・タスク名: 個包装・箱詰め作業
・担当: 製造
・期間: 41-43日目
・タスク名: 全取引先への出荷
・担当: 営業/製造
・期間: 44日目
・タスク名: 新商品、全国一斉発売
・担当: 全員
・期間: 45日目
6. プロジェクトチーム体制
・プロジェクト最高責任者(P.M.): 高梨 英治
・技術統括(品質責任者): 鈴木 誠一郎
・各部門リーダー:
・開発: 織田 浩之
・製造: 宮本 武
・営業: 田中 均
・品質管理(実務): 佐藤 健太
7. リスク管理計画
・想定されるリスク: レシピ開発の遅延
・発生確率: 中
・影響度: 大
・対策責任者: 織田/誠一郎
・事前対策(予防): 配合パターンを複数同時進行させる。外部専門家(醤油麹メーカー等)との連携を密にする。
・事後対策(発生時): 【GO/NO-GO合意会】で代替案(隠し味B)の採用を即時判断。
・想定されるリスク: 量産時の品質のブレ
・発生確率: 高
・影響度: 大
・対策責任者: 宮本/誠一郎
・事前対策(予防): ラボ試作段階から製造部が参加し、量産を見越したパラメータ調整を並行して行う。
・事後対策(発生時): 【GO/NO-GO合意会】で課題を共有。24時間以内に「カイゼン・チーム」が原因を特定し、対策を講じる。
・想定されるリスク: 包装資材の納品遅延・不良
・発生確率: 中
・影響度: 甚大
・対策責任者: 開発/購買
・事前対策(予防): 複数のサプライヤー候補と同時に交渉を進める。デザインは極力シンプルなものにし、印刷難易度を下げる。
・事後対策(発生時): 遅延が確定した時点で、オンラインストア限定の「簡易包装版」を先行発売する緊急プランに切り替える。
・想定されるリスク: 主要取引先からの発注拒否
・発生確率: 中
・影響度: 甚大
・対策責任者: 田中/高梨
・事前対策(予防): 高梨社長自らが全主要取引先を訪問し、会社の覚悟と商品の魅力を直接伝える。試作品を持参する。
・事後対策(発生時): 中小の取引先へのアプローチを強化。オンラインストアでの直販キャンペーンを緊急で実施する。
・想定されるリスク: メンバーの心身の疲弊
・発生確率: 高
・影響度: 中
・対策責任者: 高梨
・事前対策(予防): 毎日15分の「進捗共有ミーティング」以外は、不要な会議を一切禁止。週に一度は、社長が全メンバーに食事を支給する。
・事後対策(発生時): 産業医との連携。問題発生時は、高梨が直接面談し、ケアを行う。




