添付‐第4話 銀行提出財務状況報告資料
経営状況に関する緊急報告書
・ 提出日: 2025年6月XX日
・ 提出先: 株式会社みらい銀行 御中
・ 作成者: 株式会社福あかり本舗 代表取締役 高梨 英治
1. はじめに
平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。さて、今般の急激な経営環境の変化を受け、弊社の現状の財務状況、およびそれに伴う経営課題について、下記の通りご報告申し上げます。本書が、今後の金融支援をご検討いただく上での一助となれば幸甚に存じます。
2. 経営状況サマリー
前期比で売上高は横ばいを維持しているものの、昨今の急激な円安に起因する原材料費およびエネルギーコストの歴史的な高騰が、弊社の収益構造を著しく圧迫しております。自助努力のみでは吸収不可能なレベルに達しており、結果として営業利益は5,000万円の赤字を計上。資金繰りにおいても、短期的な支払能力に深刻な懸念が生じている状況です。
3. 主要財務指標
・ 売上高: 当期(2025年度見込)は18億5,000万円で、前期比は±0%です。顧客数は微増も、客単価下落で横ばいとなっています。
・ 売上原価: 当期見込は15億7,250万円で、前期比は+16.4%です。主力商品の原価率が73%から85%へと悪化しました。
・ 売上総利益: 当期見込は2億7,750万円で、前期比は-44.4%です。コスト高騰分を吸収できず、大幅な減益となっています。
・ 営業利益: 当期見込は▲ 5,000万円で、創業以来、初の営業赤字となる見込みです。
・ 短期借入金: 当期は5億円で、前期比は+150%です。運転資金の悪化を補填するため増加しました。
・ 現預金残高: 当期は1億円で、前期比は-68.8%です。赤字補填により、キャッシュが急激に流出しています。
4. 損益計算書(要約)
(単位:百万円)
・ Ⅰ. 売上高: 1,850 (構成比 100.0%)
・ Ⅱ. 売上原価: 1,573 (構成比 85.0%)
・ Ⅲ. 売上総利益: 277 (構成比 15.0%)
・ Ⅳ. 販売費及び一般管理費: 327 (構成比 17.7%)
・ 人件費: 210 (構成比 11.4%)
・ 広告宣伝費: 45 (構成比 2.4%)
・ 地代家賃・水道光熱費: 32 (構成比 1.7%)
・ その他: 40 (構成比 2.2%)
・ Ⅴ. 営業利益: ▲ 50 (構成比 -2.7%)
5. 貸借対照表(要約)
(単位:百万円)
・ 資産の部 合計: 1,000
・ 流動資産: 250
・ 現金及び預金: 100
・ 売掛金: 70
・ 在庫: 80
・ 固定資産: 750
・ 建物・機械設備: 600
・ 土地: 150
・ 負債・純資産の部 合計: 1,000
・ 流動負債: 680
・ 支払手形・買掛金: 120
・ 短期借入金: 500
・ 未払金・未払費用: 60
・ 固定負債: 150
・ 長期借入金: 150
・ 純資産の部: 170
・ 特記事項: 現預金1億円に対し、一年以内に返済義務のある短期借入金が5億円と、極めてアンバランスな状態にあります。
6. 経営課題の分析:
円安がもたらすコスト構造の破壊
今回の経営危機における最大の要因は、「円安による、複合的なコスト・プッシュ型インフレーション」であると分析しております。
・ 直接原材料費の高騰: 主力商品に使用する小麦粉や砂糖などの一部は、輸入に依存しており、円安による価格上昇が直撃しています。
・ 国産原材料の「隠れコスト」上昇: 国産手亡豆についても、生産農家が使用する肥料・農薬の原料、および農業機械の燃料の多くが輸入品であるため、生産コストが上昇し、仕入れ価格に転嫁されています。
・ エネルギー・輸送費の上昇: 工場を稼働させるための電気・ガス料金、また原材料や製品を運ぶための輸送費(ガソリン・軽油代)も、原油・天然ガスの輸入価格高騰に伴い、前期比で30%以上増加しました。
・ 副資材費の上昇: 製品を包装するプラスチックフィルムや、輸送用の段ボール箱も、原油価格や輸入パルプ価格の高騰の影響を受け、価格が上昇しています。
以上の要因が複合的に絡み合い、弊社の企業努力だけでは吸収不可能なレベルのコスト高騰を招いているのが現状です。
7. 結論および今後のスケジュールについて
以上の通り、弊社の経営状況は極めて深刻であり、早急かつ抜本的な対策が不可欠な状態です。この危機的状況を打開すべく、現在、全社的なコスト構造の見直しと生産性向上を核とした、抜本的な経営改善計画の策定を急いでおります。
つきましては、誠に勝手なお願いとは存じますが、二週間のご猶予をいただき、その期間内に具体的な数値目標と実行計画を盛り込んだ正式な経営改善計画書をご提出させていただきたく、何卒、ご検討のほどお願い申し上げる次第です。




