添付-第2話 再発防止策報告書 佐藤 健太提出
工程管理値逸脱に関する原因調査および再発防止策報告書
報告日: 2025年6月XX日
提出先: 取締役 品質管理担当 鈴木 誠一郎 様
作成者: 品質管理課 佐藤 健太
1. 事象概要
発生日時:
2025年6月XX日 午前9時32分
対象工程:
第三生産ライン 主力商品「福あかりまんじゅう」成形工程
事象:
ライン内三次元寸法測定システムにおいて、製品外径が工程管理上限値(48.30mm)を超える測定値を検出。
対象ロット:
#2105
対象サンプル:
#2105-432
測定値:
48.42mm(管理上限値48.0mmに対し、+0.12mm)
2. 緊急処置および影響範囲調査
鈴木取締役のご指示に基づき、以下の緊急処置を速やかに実施いたしました。
生産ラインの即時停止:
午前9時35分、第三生産ラインを停止。
在庫の全数検査:
対象ロット#2105の工場内在庫(3,250個)を全て隔離。デジタルノギスによる全数再測定を実施。
検査結果:
* 検査基準:良品基準となる仕様値(上限48.50mm)
* 結果:超過品0個
全数が仕様に対し基準値内であることを確認。
出荷履歴の確認:
対象ロット#2105の出荷は、前日までに3箱(360個)がA社倉庫へ納品済みであることを確認。
在庫3,250個に仕様基準値外はゼロてあること、本事象がお客様の安全性に影響が無いことから、回収はせず状況を注視する対応とする。
3. 根本原因分析(なぜなぜ分析)
【第1のなぜ】
なぜ、製品外径が工程管理値を超えたのか?
→ 成形機の金型(上型)の押し込み量が、設定値よりも0.12mm浅くなっていたため、生地が横に広がり、外径が大きくなった。
【第2のなぜ】
なぜ、金型の押し込み量が浅くなったのか?
→ 金型を固定するアーム部のベアリング(部品番号: BR-74Z)が、想定よりも早く摩耗し、微小なガタつきが発生していたため。
【第3のなぜ】
なぜ、ベアリングの摩耗を事前に検知できなかったのか?
→ 定期メンテナンス項目(週次)のチェックリストには、「異音・破損の有無」の確認しかなく、部品の寸法を測定し、摩耗度合いを定量的に管理する項目がなかったため。
【第4のなぜ】
なぜ、チェックリストに摩耗度の管理項目がなかったのか?
→ 従来のメンテナンス思想が、部品が破損してから交換する「事後保全」に重きを置いており、故障の予兆を捉えて対処する「予防保全」の視点が、現場の日常業務にまで落とし込まれていなかったため。
【第5のなぜ】
なぜ、「予防保全」の視点が欠如していたのか?
→ 品質は「守る」ものという意識はあったが、品質は「作り込む」もの、すなわち、常に最高の状態を維持するために工程の僅かな変化を能動的に発見し、摘み取るという思想が、品質管理マニュアルには明記されているものの、製造現場の具体的な作業手順にまで反映されていなかったため。
4. 恒久対策(是正処置および再発防止策)
上記の根本原因を排除するため、以下の対策を提案いたします。
4-1. 是正処置(暫定対策)
* 部品交換:
第三生産ライン成形機の、摩耗したベアリング(BR-74Z)を新品に交換。(6月XX日 実施済み)
* パラメータ再設定:
交換後、テストランを繰り返し、押し込み量を再調整。品質管理図が安定状態にあることを確認。(6月XX日 確認済み)
4-2. 再発防止策(恒久対策)
メンテナンス項目の改訂(短期):
* 全生産ラインの定期メンテナンスチェックリストに、「主要可動部品の摩耗度測定(デジタルノギス使用)」の項目を追加する。
* 各部品に摩耗度の限界値を設定し、限界値の80%に達した時点で、予防的に交換を行うルールを定める。
予兆管理システムの導入(中期):
* 品質管理システムに、「管理図トレンド監視アラート」を新たに実装する。
* 直近100個のデータの移動平均を算出し、平均値が一定方向に3回連続で変動した場合、管理限界値を超える前に、担当者へ「工程異常の予兆」としてアラートを通知する仕組みを構築する。これにより、感覚ではなく、データに基づいた予防保全を可能とする。
意識改革と教育(長期):
* 今回の事例を基に、製造部と合同で「品質カイゼン勉強会」を月次で開催する。
* 目的は、「なぜ我々は、仕様値より厳しい工程管理値で管理するのか」という品質管理の根幹思想を、現場の全作業員と共有することにある。
5. 有効性評価計画
上記4-2の対策実施後、1ヶ月間の第三生産ラインの品質管理図を重点的に監視し、管理値からの逸脱が再発しないことをもって、本対策の有効性を評価する。
以上




