踊りの披露
僕の前に立ったエリスさんは、腰のチェーンをそっと指先で確かめた。前後にぶら下がる布が多少揺れ、このあとの展開を期待させる。
「じゃあ……見ててね」
優しく微笑むと、エリスさんは草の上でそっと素足を滑らせた。
腕を振り、膝を上げ、躍動的に舞うエリスさん。
そのたびに揺れる腰布のすき間から、艶めかしい太ももが露わになる。別な角度から見ていたら、もっと踏み込んだ部分に視線が届いていたかもしれない。
僕は目を見開いて息を呑んだ。
(タダでこんなもの見せてもらっていいんすか……っ!?)
回転するたびに翻る下半身の布。汗ばむ二の腕が陽に照らされ、艶めいて見える。跳ねるとたわわな胸が弾み、胸布がはらりと取れてしまいそうだ。
エリスさんの動きは優雅で、でもその一つひとつに、むしろ危ういほどの誘惑が詰まっていた。
腰をくねらせ、背を反らし、しゅっと指を天に掲げる。すると胸の布が持ち上がり、下の丸みに滴る汗がキラリと光った。
直視してたら両目が溶けそうになるほどの色気だ。
いや、見ててと言われたんだから、遠慮なく見ようじゃないか。今だけは同意の上なのだ……!
土の感触を確かめるように地を踏みしめる素足が、妙に生々しい。時折足を振り上げた時に一瞬だけ見える足裏すらも官能的で、僕の理性を焦がしていく。
ラスト、片膝を上げてぴたりとポーズを決め、エリスさんの踊りは終わった。
姿勢を戻し、頬を少し赤く染めてこちらに笑顔を向けるエリスさん。
「えへへ……どうだった?」
「……もう、すごい……ヤバかった……!」
高揚しすぎたせきで安直な感想しか出てこなかった。
「ふふっ、褒め言葉ってことでいいんだよね?」
くすくす笑うしっとりとした唇。乱れた呼吸に上下する小さな肩。汗ばんだ白い肌。全身が濡れ滴り、エリスさんの肉体はみずみずしくテカっていた。
エリスさんは自分の色気に無自覚だ。その無自覚さこそが一番魅力的で、一番罪深くもあった。
「いけない。休憩のつもりが、ちょっと息があがっちゃった。もう少しここで休んでいこっか?」
「そ、そうだね。ありがとう、素敵な踊りを見せてくれて」
あわよくば永遠にここで二人きりでいたい。そう思わずにはいられないほどの、幻想的で夢のようなひと時だった。
しかし、穏やかな空気は突如として鳴り響いた咆哮によってガラスのようにぶち壊された。