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止まらぬ二人

「……んッ? なんだお前ら――がはッ!?」


 ぎろりと僕を見下ろしたオークは、すぐに天を仰いで卒倒した。エリスさんがしゃがんだ姿勢からの全力アッパーをオークの顎の下に叩き込んだのだ。

 エリスさんは扉の存在を認識していて、僕のそばにつきながらずっと警戒はしていたのだろう。さすが身肌集中。反応速度が尋常じゃない。


「お兄さん大丈夫? 怖くなかった?」


 扉の向こうに誰もいないことを確かめつつ、エリスさんは僕に微笑みかけた。


「だ、大丈夫……ありがとうエリスさん……!」


「よし、先に進もう」


 エリスさんと一緒にリーナさんに追いつき、再び通路を進む。今のところ他のオークには気づかれていないようだ。このまま一匹ずつ的確に倒していけば、エリスさんとリーナさんの二人だけでオークの殲滅は可能かもしれない。


「……あそこ、広そうな部屋があるわ。敵が複数いるみたいだから気をつけて」


 リーナさんの指差す先には、少し開けた空間が見えた。確かに、くぐもった獣の声が二つ、響いてくる。


 僕たちは入口付近の大きな岩の裏に身を隠した。リーナさんは反対側へ回り込み、別の死角から様子を伺う。部屋の中を覗き見ると、木箱や棚などが置いてあり、どうやら貯蔵庫のようだった。きっとアシェ村から略奪した品々だろう。

 そこをうろついているのは、二匹のオークだ。


「お兄さん……もっと寄って……」


 エリスさんが小声で言いながら、僕の腕を引いた。自然と彼女の体に密着する形になる。


 ぐいっとエリスさんの顔が近づく。その顔は汗が滴り、湿った唇から流れる吐息が僕の耳にかかった。

 そしてなんと言っても――はち切れんばかりの大きな胸が当たってるのが僕の集中を乱す。


(ち、近い……近すぎますエリスさん……!)


 焦りと興奮で心臓が暴れ出しそうになる。エリスさんの胸の谷間が、まさに視界のすぐそこにある。しかも、しゃがみ込んでいるせいで前の腰布が股に食い込み、汗でぷるぷるとした質感になっている太ももの付け根があらわになっている。


「……大丈夫、お兄さん?」


「う、うん……!」


 情けない返事をしつつも、なんとか気を逸らそうと松明の光に揺れる岩を見つめた。


「そろそろよ……! エリス、右のをお願い。あたしは左」


 リーナさんの声に、エリスさんが頷く。


「分かった……! お兄さんはここで待っててね……!」


 そう言って立ち上がったエリスさんは、颯爽とターゲットの元へと滑り込む。リーナさんも反対側から音もなく飛び出す。


「やぁッ!」


 最初の一撃を繰り出したのはエリスさんだ。くるりと身を翻し、オークの後頭部に回し蹴りを食らわせる。


「ぐはッ!?」


 オークはよろめいたが、踏ん張っていた。


「な、なんだおま――ぐえッ!」


 立ち直る隙などエリスさんは与えない。もう一度素早く回転して、オークの顔面に足の裏をめり込ませた。倒れ伏すオークの巨体。


「でりゃぁッ!」


 リーナさんの方は、異変に気づいて振り返ったオークの手から棍棒を蹴り落としたところだった。そしてそのままジャンプしてオークの額に膝蹴りをぶち込み、あっという間に撃破。腰布が思い切りめくれ上がっていたが、ぼんやりとした照明のおかげで股の間までは視線が届かなかった。


 静寂が戻る。僕はただ、二人の踊り子の華麗な戦いぶりを半口を開けて見ていただけだ。


(すごい……本当に、一瞬だった……!)


 踊り子の強さへの感動だけでなく――むき出しの肉体を躍動させて戦うエリスさんとリーナさんの姿に、僕は完全に見惚れてしまっていた。

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