侵入、オークの巣窟
「見張りはいなそうね……」
リーナさんとエリスさんがしゃがみ込んだので、僕もそれに倣った。今まで鬱陶しかった背の高い草は、身を隠すにはちょうどよかった。
「こっそり侵入して、敵がいたらスニークキル。見つかって乱戦になったら、あたしが攻撃に徹するから、エリスはお兄さんの護衛に専念して。目標はオークの殲滅。そしてリーダー格のボスオークもいるから、そいつを倒したところでクエスト完了よ」
リーナさんが真剣な表情で作戦を説明する。
しかし僕は――しゃがんでいる姿勢によって腰布がチェーンごと下にずれ、リーナさんのお尻の始まりがちらりと見えてしまっていることに意識を持っていかれていた。
「ちょっと、聞いてる? お兄さん」
「あ、はいっ……! 僕はとりあえずエリスさんにくっついていればいいんだね……!」
「うん、お兄さんはエリスから離れないでね」
エリスさんが優しい笑顔で僕に言う。これまたしゃがんでいることで前の腰布が股の間に挟まり、膨らんだ太ももがこれでもかと言うほど色気を強調させていた。
「じゃあ……行くわよ……!」
リーナさんが先陣を切って茂みから抜け出し、腰布をはためかせながら音もなく洞窟の入口へ走っていく。裸足ゆえに足音がほとんど立たない。なるほど、こういうメリットもあるのか。
「エリスたちも行くよ……お兄さん……しっかりついてきてね……!」
「うん……いいよ……!」
エリスさんも茂みから飛び出し、その大胆に揺れるお尻を追いかけて僕も必死についていく。軽い防具を選んでもらったおかげで、体の動きに支障は全く無かった。
僕が洞窟の入口にたどり着いたのと入れ替わるように、リーナさんが素早く中へ侵入する。
「今のところ誰もいないわね……! このまま静かに奥へ進むわよ……!」
無言で頷き、エリスさんがリーナさんの後ろに続く。僕もエリスさんの白く汗ばんだ背中から離れないように努めた。
入口付近は真っ暗だったものの、少し進むと通路の壁に松明がかけられていて視界は利いた。岩肌が淡く照らし出されており、ぼんやりとしたオレンジ色の光の中、僕たちは息を潜めて進んだ。
前を行くリーナさんの汗ばんだ背中が歩くたびにくねくね動き、松明の光を受けてよりセクシーに浮かび上がる。エリスさんも、岩の地面の上を裸足でひたひたと慎重に進んでいが、その柔らかそうな太ももと腰布の隙間から覗く肌に、どうしても視線が吸い寄せられてしまう。
(いけない……集中しなきゃ……!)
そんな緊張と興奮が入り混じる中、曲がり角でリーナさんが手を上げて立ち止まった。姿勢を低くして角の向こうをじっと見つめ、小声で囁く。
「……一匹いるわ」
リーナさんの後ろから覗くと、通路の先にぽつんと立っているオークが一匹――棍棒を方にかけて、退屈そうにあくびをしている。
大きな身体はごつごつとした緑がかった皮膚で覆われ、片方の肩から腹周りにかけて鉄製の胸当てが装着されている。牙が突き出た顔には温情の色はなく、握られた棍棒は人間の頭なら一撃で粉砕しそうな代物だ。
「あれが……オーク……!? めちゃくちゃ怖そうだし……武装してるじゃん……! あんなやつを素手で倒すつもりなの……!?」
思わず息を飲んでしまう。見つかったらあっという間に叩き潰されるんじゃないか――そんな想像が頭をよぎって、背中に冷たい汗が流れた。
「任せて……すぐ終わらせるから……」
僕の心配をよそに、リーナさんが、するりと角から抜け出す。オークが向こうを向いたタイミングだった。腰布が跳ね上がり、締まったお尻のラインがくっきりと浮かび上がったが、そう思ったのも一瞬のこと。
前傾姿勢でオークの背中に接近したリーナさんは、足の裏で地面を蹴って音もなく飛び上がり――。
「はぁッ!」
全体重を乗せた肘鉄をオークの後頭部にお見舞いした。
「グゥ……ッ!?」
オークは短く呻き声を漏らしただけで、ぐらりと揺れてその場に崩れ落ちた。
「よし、まず一匹……!」
強い……! そしてさすが踊り子……身のこなしが華麗だ……!
「進むわよ。ついてきて」
言うやいなや、リーナさんはポニーテールを弾ませて更に先へ駆けていく。
「行こう、お兄さん」
「うん……!」
エリスさんに手を引かれるように、僕も後を追いかける。リーナさんとエリスさんは裸足だから足音がほぼ立たないが、僕は靴を履いているため、極力音が鳴らないよう注意した。
「もう一匹いるわ……! 待ってて……!」
通路の先に、向こうへ歩いているオークが。
その無防備な背中めがけて、リーナさんは迷いなく走っていった。
疾走の勢いに任せてジャンプし、しなやかな生足をオークの首に絡ませる。
「……ッ!?」
なにが起こったのかオークが認識するより早く、リーナさんは両手でオークの頭部を思い切りひねった。
「ぐが……ッ!?」
ずっしりとした巨体が、糸の切れた人形のようにその場にくずおれる。難なく二匹目のオークを撃破。腰布をふわりと浮かしながらリーナさんは着地した。
その直後、僕のすぐ横からガチャッ……と音が聞こえた。なんとそこには木の扉があり、今まさに開いたところだった。
奥から出てきたのは――オークだ。
「う、うわぁッ!?」
僕は竦み上がって喚くことしかできなかった。




