決着
「もう大丈夫! 後はエリスに任せて! はぁぁあッ!」
エリスさんが、両手で抑えていたオーガの拳を思い切り上に放り投げる。
「グオォッ!?」
片腕を天に向けて大きく仰け反ったオーガは戸惑うように唸り、直後には横に蹴り倒されていた。エリスさんの生足が繰り出したハイキックが横顔に直撃したのだ。
砂煙が舞い上がった一瞬の隙間に、エリスさんが僕を見やった。
「下がってて! お兄さん!」
「わ、分かった! 頑張って! エリスさん!」
僕はそそくさと後退しながらもエリスさんから目を離さない。
エリスさんは先程と一転して、気迫も体力も漲っているようだった。ともすれば全身から光でも放ちそうな勢い。
明らかに満身創痍だったのに、どこからそんな力が?
回復するにしても早くないか?
「グガァァア!」
僕の疑問は猛獣の雄叫びにかき消された。オーガが反撃に出ていた。
横薙ぎに振るわれた腕は、しかしエリスさんには当たらない。
くるりと身を翻し、腰布を浮かせながら攻撃を避けたエリスさんは、裸足で力強く地面を踏みつけてジャンプする。
「てりゃあッ!」
その跳躍力も凄まじく、オーガの顎に直撃させた飛び膝蹴りは轟音を高鳴らせるほどの威力だった。
空を仰ぎ見るようにしてオーガはよろめく。エリスさんは休む間もなくオーガの腹をぶん殴った。
「ガァッ!?」
「そこッ!」
腰布からスラリと伸びる美脚を持ち上げ、立て続けに放たれるストレートキック。エリスさんのしっとりとした足の裏がオーガの顔面を更に醜く歪ませた。
「まだまだァッ!」
踵による回し蹴りが脇腹にヒット。
飛び上がりざま、再び膝蹴りが顎を撃ち抜き、降りながら肘鉄を首の付け根に叩き込む。
「グエッ!? ンガァ!?」
オーガのうめき声が連発する。エリスさんの怒涛の攻撃だ。躍動する肉体。飛び散る汗。
「す、すごい……すごすぎる……エリスさん……!」
乱れに乱れる衣服を気にすることなく猛烈な勢いでオーガを押しまくる踊り子の少女――。
その勇ましく美しい姿に僕は生唾を飲み込み、釘付けになる。
「うぉぉぉおおッ!!」
腹へ、全体重を乗せた正拳突き。その細い腕からは想像もつかないような一撃が決まり、オーガの巨体がバランスを失う。
「これでッ! 本当にトドメぇぇーーーッ!!」
最後に、全ての布が引き剥がされそうになるほどの渾身のハイキックが、オーガの横顔を蹴り薙いだ。
「グオォォォ……ッ!」
オーガが、まるで足元が崩れた石像のように仰向けに倒れる。
最期に地鳴りを盛大に響かせ、オーガは今度こそ動かなくなった。
前半の苦戦とは打って変わって、突風のように迅速に迎えた、決着。
あたりはしんと静まり返る。聞こえるのはエリスさんの荒れた呼吸だけ。
「はぁーっ! はぁーっ! お、終わった……!」
エリスさんがこちらを振り返る。懸命に息を整えようとしながら、汗だくの顔で僕に微笑みかける。
「ふぅっ……! 勝ったよ……! お兄さん……!」
濡れた太ももの内側に腰布が張り付き、胸を隠す布は外れかかっていたけど、その全てが今はかっこよく見えた。
ここまで読み進めてくださり、大変ありがとうございます!
この先も踊り子とのワクワクドキドキの旅が待っていますので、
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そうするとエリスの布がもっとめくれちゃうかも……!?