05
新聞配達を開始して一月後、キールにまた鳥人集落まで行ってもらい、例の仕事の依頼をした。
賃金もこの辺の相場よりもだいぶ良いため、集落の者は二つ返事で了承してくれた。
鳥人達が真面目に仕事をこなしてくれたお陰で、一月もすると苗木は想定していた以上に植えられた。
また彼らのおかげて、ダンジョンレベルは13まで上がり、なかなかの滑り出しだと思われた。
だが。
とある日、いつもの時間に植栽をしてくれる人たちが来ない。
集落に何か問題が?
ダンジョンのレベルが上がった結果、購入可能となった商品『監視花』。
これは、監視カメラ兼侵入者の発見ができる花の形をしたモンスターだ。
これをダンジョン内部と「エリアの苗木」を植えたダンジョンエリアの至る所に設置した。
エマは、ダンジョン内で監視花から送られてくる映像をモニターに映し、切り替えながら確認していくと、
「キール、いつもお仕事に来てくれる方たちとイワンが洞窟の近くまで来ているわ。
いつもと違う様子よ。
お話を聞いてあげて。」
「了解だ、主。」
☆★☆
いつも通りキールが洞穴の中で集落の大人たちを出迎えた。
「今日はいつもより遅かったな。
それに、イワン。
君はもう今日の仕事は終わっただろう。
皆揃って、どうしたというんだ?」
「あの、ご相談があるんです。」
「相談?」
「貴族様のお知恵をお借りしたいんです!」
「助けてください!」
「どうか、御慈悲を!」
エマは、モニターで様子を見ていたが、「ただ事ではないな…」と感じ、彼らのいる所まで行くことにした。
「落ち着きたまえ。
本当にどうしたというんだ。
話はまず、俺が聞こう。
内容によっては、主人に申し伝える。」
「わかりました。
実は、税金がかなり上がるんです。
一人一月、500テイル。
今の僕たちの生活では、とてもじゃありませんが毎月支払えません。」
「何?ここはこの国で一番税金の安い5テイルだったはず。
それが、500テイルだと?
王都でさえ、そんなに高くはないはずだ。」
「もう我々はどこにも行ける場所がないんです!」
「どうか、お助けください!!」
500テイル。
どう考えても高すぎる。
この不毛地帯でそんな税金を納めることができる裕福な暮らしをしている者などいない。
だからこそ、税が5テイルなのだ。
考えられることは、
つい先日読んだ新聞(つまり実際はかなり昔の記事だが)に王が天に召されたと書いてあった。
そして、新たな王が即位した、と。
もちろん、あの元婚約者の王子である。
そして、王妃はあの男爵令嬢だ。
この税金が上がったことも、きっとこのことと関係しているのだろう。
ならば、することは決まっている。
「ふむ。・・・・主、今の話、聞いたか?」
キールは、エマが奥の暗がりに隠れていることを察知し、振り向いた。
「ええ、確かここは王子の側近の領地でしたね。
早速、この国の政治崩壊の兆しが見え始めましたか。」
「どうするかね?」
「もちろん、対処するわ。
せっかくですから、このダンジョンの防衛機能の検証をしましょう。」
優雅な立ち振舞をしているが、心の中では、
待っていろ、王子、ギャフン!と言わせてやるからな!とエマは拳を強く握っていた。
△▲△▲△▲
所変わって、宮殿内。
メアリーは、メイソンの執務室を訪れた。
王が崩御し、メイソンが新たな王となってから、初めてメイソンと二人きりになる。
「メイソン、聞きたいことがあるの。」
「どうしたんだいメアリー、とても顔色が悪い。
何か困ったことが起こったのかい?」
メイソンは優しい口調でメアリーに問いかける。
メアリーは、自分でも顔色が悪いことが分かった。
血の気が引き、手が震えている。
「あのね、あ、あなたのお父様、つまり前国王のことなのだけれど・・・」
そこで、一度言葉を切った。
こんな事、聞いても良いのだろうか?
いや、ここでやっていくためにも、知っておきたい。
「前国王は、本当に老衰で亡くなったの?」
メイソンは、目をぱちくりさせ、安心させるように優しく微笑んだ。
「そうだよ。
少し前までね、とても重い病気を患っていたんだ。
それは治ったんだが、体力がなかなか戻らなくて、そのまま・・・」
そこで、メイソンは顔を伏せた。
メイソンの表情がはっきり見えず、メアリーはその言葉が本当なのかどうか分からなかった。
メアリーが何故そんなことを尋ねたかというと、メアリーは一度も前国王に会ったことがないからだ。
遺体すら見たことがない。
体の具合があまりよくなく、ずっと臥せっているというのは、宮殿で生活するようになってから聞いていた。
ならばと、お見舞いに行きたい旨を伝えても、お気持ちだけ、という返事だけだった。
そして、そのまま会うことなく亡くなった。
葬儀で顔を見ることさえ、次期王妃であるにも関わらず叶わなかった。
自分が男爵位だから、そういった対応をされるのかと思ったが、どうやら違うようだ。
前国王の第二王妃すら、自分と同じ状態だったと聞く。
何かがおかしい。
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