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「ふぅ〜、取り敢えず危機は去ったってところかしら」
モニターで子爵領の兵士達の様子を見ていたエマは背伸びをした。
「コクトーさんが居てくれて良かったわ。
そうでなければ、兵士達の足止めは難しかった。」
「お役に立てて光栄デス。」
コクトーはエマの手を両手で握りしめ微笑んだ。
が、すぐにキールが手を引き剥がし、それにコクトーは、ふふふと笑って身を引いた。
さて、今回もいつも通りに追い払うことを主軸にした作戦だった。
まず、ダンジョンの力を使って嵐をおこした。
だが、ダンジョンエリア全域に嵐を起こすと大量のマナを消費するので、兵士のいる一部分だけにエリアを絞った。
もちろん周囲が晴天にも関わらず、一部分だけ嵐だと集落まで強行突破してくる可能性がある。
その対策として、『雨女』というモンスターを召喚した。
『雨女』は、雨を降らせることに特化したモンスターだ。
このモンスターを各地に配置し、ダンジョンエリア全域を雨にした。
また、ただの雨では強行突破もありえるため、コクトーの『個性』を利用した。
魔界の住人は、それぞれ『個性』を持っている。
コクトーの『個性』は、『女性優位』。
仲間の女性、女型のモンスターの能力を底上げするという『個性』だ。
これにより、『雨女』の能力を底上げし雨量を増やした。
これでまず、兵士を足止めする。
次に、兵士達を退却させるために召喚したモンスターが『ロックんロール』。
丸い岩に手足がついたモンスターだ。
ただただ目標地点まで転がるだけのモンスター。
このモンスターを大量召喚し、兵士の見ている中で、とにかく子爵領めがけて転がってもらう。
それを見た兵士達がとんぼ返りしてくれれば儲けもの。
そして、『ロックんロール』に気を取られている隙に泥の手の形をしたモンスター『マッドハンド』で兵士の足を掴む。
動けなくなった兵士を泥の塊の『マッドウーマン』が呑み込む。
(これも、コクトーのお陰で能力がアップされた。)
『マッドウーマン』に『レベル吸収』のスキルを付与し、兵士のレベルを下げダンジョンに経験値を付与。
呑み込まれた兵士は、今回はダンジョンエリア外に出さず捕虜とした。
「まさか、全ての兵士が帰ってくれるなんてね。
運が良いわ。
捕虜にできたのは1割程度かしら。
上出来よ。
これで、こちらから攻めこめる。」
「ふふふ、楽しみデス」
「さあ、反撃よ?」