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ホセは伯爵領奪還のため、意気揚々と100を超える部隊と共に子爵領を出発した。
子爵領から一番近い伯爵領の集落までは、歩けば3日。
中心街までは5日。
兵士の数の多さ、それにホセが馬車で移動していることもあって、最初の目的地の集落には4日後に到着する予定だ。
ホセとしては、派手に一気に中心街まで攻め込みたかった。
だが、子爵は「モンスターの数、種類がわからないのです。いたずらに兵士を消耗させるわけにはいきません。」と、慎重に事を運ぶことを進言した。
ホセは不満だった。
だが、王都の兵以外全ての兵士が子爵家の兵士だ。
無理を言っても聞き入れないだろう。
不満はあるものの、成功すれば全ての手柄が自分のものにできるから、多少の事は我慢しようと思った。
馬車の中から外の景色を眺めた。
田舎だ。
何もない。
早く領地を取り戻して王都に帰りたい。
ホセは代わり映えのしない風景にすぐに飽きて、到着まで眠ることにした。
タンッ
タン
タタンッ
しばらくすると、馬車の天井に何かがあたる音がした。
雨だ。
さっき外を見た時は、雲一つない快晴だった。
というか、伯爵領はほぼ毎日が快晴だ。
砂漠地帯がある伯爵領はなかなか雨が降らない。
それなのに、こんな時に雨か。
タンッ
タタンッ
ダンッ
次第に、雨粒の音が重くなってきた。
外を覗くと、横殴りの大雨だ。
「失礼します!
嵐のため、一時進軍を中止いたします。
森の中でしばらく様子を見たいと思います。」
たしかに、雨音と風の音がすごい。
その上、風で馬車が横に揺れている。
この領地で嵐?
砂嵐ならまだわかるが。
出来るならば、すぐにでも集落に到着したいところだっだが、ホセも状況は理解した。
「フンッ、好きにしろ!」
ツイてない。
馬車の中で舌打ちをした。
子爵領を出て早々に出鼻をくじかれ、ホセの不満がたまっていく。
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とある部隊からの報告
伯爵領奪還のため、伯爵家嫡子を連れ子爵の兵士が進軍開始。
場合によっては、手を貸す。