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「凄いわね、スライムからエメラルドの原石が出てくるなんて。
しかもこんなに大きい上透明度が高い。
色も申し分ないわ。」
エマは手のひらにのせ、まじまじとエメラルドの原石を眺めた。
「君、よく素手で触れるな」
キールは、それ、スライムのウ◯コだろ、という言葉をどうにか飲み込んだ。
「ふふふ。
エマ様、こちらのルビーの原石もなかなかのモノデスよ。」
エマにルビーの原石を渡した人物は、ワイズの紹介により新たなに雇用したコクトーだ。
身長は2メートルを超える細身、肌が真っ白で髪と瞳はエメラルドの美しい男だ。
ちなみにコクトーは、オークという種族だ。
彼がオークだと知った時、驚いた。
冒険譚に出てくるオークの姿とかけ離れているからだ。
種族を知ったエマが目をまん丸にしてコクトーを見ていることに気がついたワイズは
「エマ様のオークのイメージは、きっと巨体で豚のような顔をした野蛮なモンスターのイメージですよね?」
エマは頷く。
コクトーがふふっと笑い、
「それは、ダンジョンモンスターのオークデスね。
私達魔界の種族のオークとは、別ものデス。
まぁ、完全に別物というわけではないのデスが。」
エマは、どういうことか?とワイズに目で尋ねると、察知したワイズがすかさず解説をいれる。
「ダンジョンモンスターは姿形は生物ですが、実際は生物ではありません。
マナの集合体です。
だから、ダンジョンモンスターはダンジョンエリア外でも活動できます。
バーニーさんやコクトーさんは、れっきとした生物。
ダンジョンエリア外では呼吸が出来ませんので、活動は難しい。
もちろん、マナを集めただけではモンスターにはなりません。
特定の姿形を与えるための、エッセンスが必要になります。
もちろん、そのエッセンスは企業秘密です。
ですがエッセンスの多くは、魔界の種族を参考にしています。
モンスターですから、凶暴性等偏ったステータスが必要になります。
ですから、エッセンスにはそういった偏りを持たせています。
そのため、エマ様が想像したオークの姿とコクトーさんの姿が異なるわけです。」
コクリとコクトーは頷いた。
「デスので、ダンジョンモンスターは私達に似ている特性を持っています。
例えば、ダンジョンモンスターのオークは、女性好きとされております。
オークである私も女性が大好きデス。」
コクトーはエマの髪を一房とり、口づけをした。
それを見たキールは、咄嗟にコクトーの手をはたきエマとコクトーの間に入った。
それにコクトーは、ふふっと笑って身を引いた。
すかさずバーニーが、
「あらン、一人の女性をめぐって二人の男が争う!
羨ましいわン!」
「ち、ちがっ!
俺はただっ、そのっ!」
と、キールが顔を赤くしながら口をパクパクさせた。
エマが何顔を赤らめているの?と言おうとした時だった。
ビーッ!
ビーッ!
ビーッ!
監視花からの緊急通報が入った。