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まだかまだかとメアリーは知らせを待っていた。
ペイン隊を派遣して1月が経とうとしている。
そろそろ戻って来ても不思議ではない。
なのに伯爵領について、何の知らせもない。
それが、メアリーを不安にさせた。
あちらで何が起こっているのか。
それは、自分と関わってくることなのか。
もし予想通りエマが首謀者ならば、メイソンに兵を派遣して対処して貰えるはず。
エマでないなら、それはそれで安心できる。
早くこの不安から解放されたい。
コンコン
「王妃、お客様です」
きた!!
「通して」
そこに現れたのは、待ち人ではなかった。
気まずそうにするホセが現れた。
「ホセ、どうしたの?」
「メアリー、お願いがあるんだ」
「お願い?」
やはり、エマが侵略を・・・
「お金を、貸して欲しいんだ」
「へ?」
「借金の督促状が王都の屋敷に届いて・・・
いつもなら執事長にいくはずなのに、これからは俺達のところに直接借金取りがくるって督促状に書いてあった。
なあ、メアリー!
俺達友達だろ?
助けてくれよ。
メアリーが王妃になれたのだって、伯爵家である俺が側にいたから、メイソンも近づいてきたんだ。
つまり、俺のお陰だ。
俺に感謝すべきなんだ!
なあ、王妃用の予算ってたくさんあるんだろう?
俺にその金の一部をくれよっ、な?」
(なんて、身勝手な言い分!!
ゲームのキャラクターでもないのに交流を続けてあげたのは、こっちの方よ!
王妃とお近づきになれたのを感謝するのは、そっちの方!
なぜ、私がお金をあげなきゃいけないの!)
本来ならば、毅然とした態度をとるべきだ。
王妃に対する不敬罪に問われても可笑しくない。
それでも、何も言えなかったのは、持ち前の気の弱さのせい。
それに、ホセぐらいなのだ。
学生の頃から変わらずにメアリーと呼び捨てにしてくれる、王妃でない自分を見てくれているのは。
今では、自分を訪ねて来てくれる友達は少なくなった。
ゲームの攻略キャラクターだって、なかなか会えない。
だから、ホセとの縁を切るのが怖い。
ホセを突き放せない。
言いたいことを言えずにムカムカしていたが、メアリーは閃いた。
(これはチャンスよ。
お金でホセに言うことを聞かせられる)
「わかった。
お金を工面してあげる。
でも、その代わり条件がある。」
「条件?」
「あなた自身が伯爵領に行って、領地の状況を確認してくるの。
そして、あなたの領地を侵略した首謀者を見つけ出して。
もし首謀者が、エマ・ブリンドルだったらここに連れてきて。
出来たら、お金を必要なだけ用意してあげる。
一人では不安だと思うから王都の部隊も付けてあげる。」
ホセは、少し考えた。
執事長には文句を言いたかった。
自分の領地に行って、戻ってくるだけで金が手に入るならば良いだろう。
「分かった。金を用意しておけよ」
○●○●
とある電報
王妃が伯爵家長男と部隊を伯爵領へ送る。