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さて、エマが用意したお金で全ての借金は返済された。
まず、エマはこの屋敷にしばらく住むことにした。
そこで執事長オズ宛に王都から兵士か伯爵が来るのを待った。
本来ならば、借金返済と同時にダンジョンエリア化してもよいのだが、街の住人達からの反感を抑えるため、敢えて王都から人が来るのを待った。
そして、現れた王都の部隊。
やはり、最初に伯爵領の管理人へ挨拶と情報収集にきた。
そこで、すでにこの街が侵略済という嘘の情報を与え、傷一つ負わずに帰ってもらう事が大事だった。
住民に見せるのだ。
いつモンスターがやってくるかも分からない恐ろしい状況であるのに、何もせず平然と帰る兵士の姿を。
この街は見捨てられた、と印象づける。
後は、オズとエマが演説するのみだ。
現在の財政状況及び伯爵の領地への対応。
そして、財政破綻後の未来とエマに従った場合の未来。
さらに王都の兵士達は、戦うこともせずに諦めて帰った。
そんな兵士達がどうして住民達を守れるというのか?
住民達の平和な日常は、自分が守る。
モンスターは、決して住民達を傷つけない、と。
「それにしても、アタシが一緒にいた意味ってあったのかしらン、エマちゃん?」
「もちろんよ、バーニーさん!」
ペイン達との席にキールと一緒にいた生き物。
それは、魔界からやってきたバーニーだ。
ワイズの紹介により、エマの使人となった。
バーニーは、二足歩行で筋肉隆々の人よりも大きなオスの白ヤギの姿をしている。
以前ワイズから、
「魔界から人材を斡旋することも可能です。
ダンジョンエリアも大きくなり、なおかつエマ様は街を呑み込んでおり、各街の役人が必要でしょう?
それも、ダンジョンに詳しいものが。
そこで、魔界にいるちょうど良い人材をピックアップしてみました。
給金は、マナベリーとなります。
どうぞご検討を」
と、言われバーニーに決めたのだ。
今回、屋敷だけをダンジョンエリア化したのは、バーニーはダンジョン及びダンジョンエリア内でしか活動できないからだ。
バーニー曰く、
「エマちゃんだって、水の中で呼吸できないでしょうン?
それと一緒。
アタシ達魔界の住人は、こっちの世界ではダンジョン以外で呼吸できないのよン。
え、ワイズちゃん?
彼は、別!
彼、凄い子なのよン!
エリート中のエリートなんだからン!
ンもぉ〜素敵!!」
体をくねらせるバーニーは置いておいて
「さっ、これで王都にわたくしの情報が伝わるわ。
急いで次にすすまなくっちゃ!」