29
「あ、あなたはっ!!」
ペインは、目を見開き驚いた。
「エマ・ブリンドル公爵令嬢!」
入ってきたのは、エマと獣人、それに見たこともないモンスターのような獣人のような生き物だった。
「もうただのエマよ」
ペインだけではなく、部隊の全員がざわつき、剣に手を掛けた。
「何故、貴方がここに?」
「それはもちろん、この街がわたくしのものになり、今はここで暮らしているからです」
「なんて事だ。
噂は本当だったということか。
王都では、貴方がモンスターを率いて街を侵略した首謀者だというものがあった。
だが、人間がモンスターを率いる力があるなんて聞いたことがない。
だから、嘘だと思っていたが・・・。
悪魔とでも、手を組みましたか?」
「想像にお任せするわ。」
エマは、優雅に美しく笑った。
「本当にこの街は侵略済、ということなのですね?」
「そうよ。
一月もあれば、簡単に侵略できるわ。」
「街に異常がなかったから、気がつかなかった」
「皆様快く、わたくし達を迎え入れて下さったの。
伯爵は、全くこの地に足を運びませんからね。
あまり人望がなかったのでしょう。」
「これから俺達は、どうなる?」
「ふふっ、安心して。
どうぞ、お帰りになって?
わたくし達は、貴方達が剣を抜かない限り戦う意思はないの。
現状を王都にお伝えして下さいな」
「隊長」
隊員は一人も剣から手を離さず、侵略者を捕まえる、もしくはこの場で切り捨てるという意思を示した。
だが、
「分かりました。
この場は、帰させて頂く。」
ペインは、騎士の礼をし、隊員を連れ帰る決断をした。
屋敷から出た隊員は、
「何故です!?」
「我々の命令は、首謀者の特定だ。
それに見ただろう?
あの生き物を!
勝てるのか定かでない。
あんな生き物、初めてみた。
この情報を何としてでも、持ち帰らなければならない。
下手すれば、この国の危機になるかもしれん!」
ペイン部隊は中心街を出て、伯爵領からも離れようとした。
その時だった。
「ねぇ、強そうな兵士さん達!」
「っ!!?」
自分達の背後に男が立っていた。
気がつかなかった。
自分の背後に人がいることに。
声をかけられるまで気が付かないなんて。
「誰だ、お前は?」
「今から君たちを殺す者さ!」
ニッコリと男が笑ったと思った瞬間、部隊全員の頭が首から離れ、ポトンッと落ちた。
「これから面白くなるんだから、邪魔しちゃダメだよー?
いや、それとも僕が邪魔してるのかな?」
部隊全滅により、王妃に情報が届くことはなかった。