20
一部の者がダンジョン追放となった。
その中には、ゲイルも含まれており、伯爵を通じて王に現状を報告したのは彼だった。
ただゲイルは、エマと会うことなく街から逃げ出したため、首謀者が誰か知らないままだった。
侵略される最中、ゲイルは強い部下を引き連れて、近くの集落に逃げ込んだ。
しかし、その集落も侵略され、次の集落へと逃げるがまた侵略され、なし崩し的に砂漠を超え、ゲイルは伯爵領の中心街まで逃げる羽目になった。
このことは、エマにとっては幸運だった。
何度もダンジョンエリアから逃げてくれたお陰で経験値を貰えたのだから。
武器の経験値交換、さらにダンジョンからの追放で、エマのダンジョンレベルは20まで上がった。
これならば、末端の兵士くらいならば互角に戦えるだろう。
だが、
「街の役人が逃げこんだ先は、伯爵領の中心街。
この地の異常性も知られることとなったわけだ。
どうするんだ、主?
レベル20では、伯爵領の精鋭兵には敵わないと思われるが?」
「そうね、まずはここから近くの集落を侵略するわ。
有り難いことにこの辺りと中心街は大きく地形が異なっている。
中心街は、砂漠地帯でなく緑地よ。
だから、彼らは砂漠地帯はまだ侵略されていない土地で森林地帯が侵略された地だと思うはず。」
「現にそうだろう?」
「今はね。
でも、このカタログを見て。
レベル20になったお陰で、『エリアの苗木』が別の姿で召喚できるようになったの。」
「これは・・・サボテン、か?」
「ええ、この地域ではよく見る種類のサボテンに似てるでしょ?
これなら森林地帯にならずに済むわ。
この苗木で残りの砂漠地帯の集落、いえ砂漠地帯全域をダンジョンエリアに変える。」
「なるほど、確かにそれならば目立たず出来そうだ。」
「そうでしょ。
さすがにいきなり伯爵家の精鋭が一気に来るとは思えないの。
まずは、侵略された地の近くの集落に拠点を置いて、準備を整えるはずよ。
つまり、砂漠地帯をダンジョンエリアだと知らずに踏み込ませる。」
「ダンジョンエリアに踏み込ませれば、意表をつける、ということか?
だが今回はどうする?
また激辛ラーメンを作るのか、俺は?」
キールは、げんなりした。
「いいえ、今回はモンスターにお願いするわ。
砂漠という立地を活かしてね。
それにダンジョンとバレない程度のトラップを置くわよ。」
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ワイズの業務日誌
第801号ダンジョン、ダンジンエリアの拡大を完了。
レベルが20となった。
ダンジョンマスターが他のダンジョンマスターとの交流を希望。
隣国のダンジョンマスターにアポイントを取る。