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エマは街の住人を集め、自分の民となるか、それとも他の地に移り住むか、問うた。
ほとんどの住人は、残ることを決めた。
それは、そうだ。
ハヤブサの獣人同様に、ここの住人も税が安いからこの街で暮らしている。
この街以外に生きていける場所などない。
それに慣れ親しんだ場所から離れる恐怖もある。
たとえ砂漠から森へと激変してしまったとしても、ここが故郷であることに変わりないのだ。
エマは安全に暮らせることを約束してくれたが、いきなりモンスターと共に街を蹂躙してきた者の言い分なと信用出来ない。
それでも住人達は従わざるを得なかった。
モンスターがあまりにも恐ろしく、頼りになる兵士は眠りこけ、武器はメガネの男が消してしまい、戦う術もない。
住人達は、新たに即位した王を恨んだ。
なぜ、このようなことをする者をこの地に送ったのか。
エマがこの地に来なければ、自分達は今も平穏な日常を送っていたはずなのに。
★☆★☆★☆
恨まれてる王メイソンはというと、メアリーと一緒にセルヴェからこの街について報告を受けていた。
「モンスターが大量発生し、街までなだれ込んだ。
だが、そのモンスターは何者かに操られているかのように統制の取れた動きをしていたらしい。
街は砂漠から森へと急変。
現状は、何者かに集落三つと街一つを落とされたと考えている。
首謀者は分かっていないが・・・まさか、エマ嬢じゃないよな?」
「エマにこんな力ないよ。
だけど、獣人の集落まで行けなかった時の魔法、それはエマのものかも知れない。
少なくとも関わっているとみていいかもね」
「国として対応するのか?」
メアリーは、真っ青になった。
報復だ。
よく小説とかで読んだ「ざまぁ」だ。
自分は、される側になってしまったのだ!
自分は悪くない。
ただ幸せになろうとしただけだ。
安全で幸せな道があると分かっていて、何故他の道を歩もうというのか。
ただ自分は、確実に幸せになれるだろう道を歩んだだけなのに。
どう対応をとるのだろうかと、メイソンの顔を見ると、
笑っていた。
楽しそうに。
「メイソン?」
「ん?あぁ、この件に関しては、伯爵領なのだから、伯爵自ら解決してもらおう」
自分の国の一部が何者かに取られたのに、何故笑っていられるのか?
メアリーは、不気味でならなかった。
○●○●○●
とある電報
“ドラゴン・テイル国の最南端の街が何者かに侵略された。
首謀者は、エマ・ブリンドルと思われる。
首謀者が分かり次第、また連絡する。”