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日が完全に昇りきる頃には、決着はついた。
呆気ないほどに一方的な侵略行為だった。
エマの侵略行為は、この街からさらに進み、近くの集落2つもダンジョンエリアに収め、一旦歩みを止めた。
ゲイルの執務室だった場所でエマとキール、それにワイズで集落の侵略の様子を見守っていた。
「さて、エマ様、これからどういたしましょうか?
現在、ダンジョンエリアの拡大はしたものの、経験値は一切入っておりません。
これだけ大規模に動いたのですから、周辺地域に知られるのは時間の問題です。
現在のレベルでは、防衛に心許ないことはエマ様も重々承知のことでしょう。
早急にダンジョンレベルを上げる必要があります。
兵士や住民を始末して経験値にする方法が一番簡単ですが、エマ様はその方法は望まないようですからね。
そうすると方法は残り2つ。
ダンジョンエリア内の人間を追放する、街の物資を経験値と交換する方法となります。」
侵略の手を止めると言ったエマに対してワイズは問いかけた。
「ええ、そうね。
わかっているわ、ワイズ。
まず、街、集落の住人に問います。
わたくしの民となるかどうか。
ならないと言った場合は、追放します。
街の物資については、武具全般を全て経験値と交換するわ。」
「おや、それでは大した経験値にならないと思いますよ?
ですので、一つ提案が。」
「提案?」
「ええ、エマ様の民にならないと言った者の強制使人化をお勧めいたします。
ダンジョンの力で人間とモンスターを融合し、使人とすることが出来ます。
言ってみれば、キメラ化のようなものでしょうか。
本来、召喚したモンスターはダンジョンレベルと同じになりますが、キメラ化することで元となった人間のレベルになります。
さらに、キメラ化してしまえば、ダンジョンの主に逆らうことは出来なくなりますので、安全も担保されます。
ダンジョンより低いレベルだったら追放を、高ければ使人化を。
効率的ですし、割とキメラ化は他のダンジョンマスターも使っておりますよ。」
「ちょっと待って。
割と使われているですって?」
「ええ。
そう言えば、エマ様は、他のダンジョンマスターにお会いしたことがありませんでしたね。
せっかくですから、これを機にお会いするのも有りかもしれませんよ。
手配いたしましょうか?」
「そうしてちょうだい。
キメラ化をしているダンジョンマスターに是非話を聞きたいわ。
兎も角、キメラ化はしない。
追放します。
キール、住人達の意向を聞きに行くわ、ついてきて。」
「承知した」
「ワイズは、武具全般を経験値に変えてちょうだい」
「承りました」
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とある部隊からの報告書
本日、エマ・ブリンドルが街の侵略を完了。
今後の動きを注視する。




