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00-02


今日もイワンは、いつも通りに給金を受け取り集落に戻ってきた。

本来ならば、イワンが戻ってきたのを確認した大人たちが意気揚々と出かけるはずなのだが、

今日は何やら集落の中心で話し込んでいる。


「どうしたんですか?」

「おお、イワン。戻ったか。実は・・・・」


一人の大人が言おうか言わまいか悩んでいると、別の大人が口を開いた。


「実は、税金が上がる。」

「しかも、かなり、な」

「そんな・・・・いくら、ですか?」


「一人一月500テイル」


「何だってっ!!!?

今までの100倍じゃないですか!

そんなお金ないよ!冗談ですよね?」


「残念ながら、本当のことだ。

さっき役人が来て、そう言ったんだ。」

「そ、そんな・・・・」


あまりに残酷な現実にイワンは頭の中が真っ白になり、よろめきながら一歩二歩と後ずさった。

それもそのはず。


この砂漠地帯の住民税は、一人一月5テイル。

イワンは5歳の妹と二人で暮らしているので、毎月10テイルを納めている。

周りの大人達の助けもあって、子ども二人でも何とか生活ができていた。

だが、毎月1000テイルなんて、子どものイワンが稼げるわけがなかった。


一体どうしたら・・・・。

周りの大人たちも動揺しきっていた。

この地域は税金が一番安い。

これ以上安い土地は、この国にはないのだ。


このままでは、税金が支払えないために奴隷の身分に落とされる可能性が高い。

今の給金よりいい仕事なんて見つからないだろう。

イワンは、手のひらにある今受け取ったばかりの給金をぼんやりと見つめた。

そして、あの狼の獣人の顔が浮かんだ。


「・・・・・洞窟の、貴族様にご相談に行きませんか?

偉い貴族様ならば、何かお知恵をお貸ししていただけるかもしれません。」


名案だと思った。


姿を見たことはないが、これだけ羽振りの良い貴族だ。

何かしらの打開策を教えてくれるかもしれない。


「そう、だな」

「行ってみるか」


大人たちも頷き、皆で洞窟に向かうことになった。





☆★☆


ピコン!!


洞窟に入ると必ずこの音がなる。

これはきっと、貴族の屋敷についているベルというものだとイワンは大人から聞いた。


そこでしばらく待っていると、いつも通り狼の獣人のキールが姿を現した。

彼は、足が悪いようで片足を引きずりながら、杖をついてゆっくりとこちらに向かってくる。


褐色の肌に細長く鋭い蒼い目、それに艶やかな灰色の髪をした青年で、奴隷の証の首輪をつけている。


ここに住む貴族については何の情報もないが、獣人を奴隷としている点では、やはり獣人を差別する人間なのだろうとイワンは考えた。


だが、奴隷独特の世の中に絶望したような目をしているわけでも、覇気がないわけでもない。


それに、狼の獣人はプライドが高く、主人と認めたもの以外から施しは受けないという。

見たところ、やせ細っているわけでもない。

しっかりと食事をしているのだろう。

片足が不自由ではあるが、その他は健康的な肉体のように見えるし、服装も質素であるが清潔感があり、自分たちよりもまともな生活をしているように思えた。



「今日はいつもより遅かったな。

それに、イワン。

君はもう今日の仕事は終わっただろう。

皆揃って、どうしたというんだ?」


「あの、ご相談があるんです。」

「相談?」

「貴族様のお知恵をお借りしたいんです!」

「助けてください!」

「どうか、御慈悲を!」


「落ち着きたまえ。

本当にどうしたというんだ。

話はまず、俺が聞こう。

内容によっては、主人に申し伝える。」


「わかりました。

実は、税金がかなり上がるんです。

一人一月、500テイル。

今の僕たちの生活では、とてもじゃありませんが毎月支払えません。」


「何?ここはこの国で一番税金の安い5テイルだったはず。

それが、500テイルだと?

王都でさえ、そんなに高くはないはずだ。」


「もう我々はどこにも行ける場所がないんです!」

「どうか、お助けください!!」


大人達が口々に助けを乞う。



「ふむ。・・・・主、今の話を聞いたか?」



キールが顔を向けた洞窟の奥深くの暗がりに、イワンも目を向けた。

洞窟の暗がりから、コツンッコツンッと高い足音が聞こえてきて、徐々に大きくなってきた。


「ええ、聞いておりました。

確かここは王子の側近の一人の領地でしたね。

まったく……早速、この国の政治崩壊の兆しが見え始めましたか。」



深いため息と共に洞窟の暗がりから、ようやく姿を現した。


とても綺麗な女の子。

これが、貴族様。


流れる小川のように美しく靡いた黄金の髪に、深い湖の底のような瞳。

白く美しい肌。

妹が好んで見ている絵本に出てくるお姫様のようだ。


「どうするかね?」

「もちろん、対処するわ。

せっかくだから、このダンジョンの防衛機能の検証をしましょう!」


ニヤリと貴族らしからぬ不敵な笑みを見せた。


彼女こそが、キールの主人。

そして、元公爵令嬢にして、現ダンジョンマスター。

これは、彼女の物語。


読者の皆様へ


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