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「おい、奴らは税を納めに来なかったな?」

「もちろんです。

あの獣人たちに一人500テイルを支払う財力はありません。」

「そうか。ならばいいい。」


この街の管理を任されている役人ゲイルは満足げな笑みを見せ、紅茶(この街の平均月収よりもずっと高い!)をとある文書を見ながら啜った。


その文書には、この領地の主、伯爵家より

『兵士を求める。

獣人であれば、なお良い。

兵士の質次第では、褒美を与える』

と書いてある。

伯爵からこの文書が届いたのは、一月前くらいのことだったか。

この文書を読んだ時、すぐにゲイルは転機だとみた。

砂漠の奥地に住むハヤブサの獣人を兵士として伯爵家に納め、褒美として自分はもっと中央の街の管理者に就任する。

こんな砂漠地帯とおさらばできる方法が目の前に提示された。

この機会を逃すわけにはいかなかった。


ちょうど伯爵から増税の知らせを受けた時だったから、ハヤブサの獣人達に支払いが不可能なほど税をつり上げるには良かった。

ちなみに住人一人当たりの税額は、街の役人が決めている。

決められた税を伯爵に役人がまとめて納るので、ゲイルのような街の役人は決められた額よりも多めに税金を貰い、懐を潤している。

つまり、ハヤブサの獣人達の税額を自由に決められる。


普段目立つ程税を引き上げることはしないが、今回は特別だ。

自分の今後の人生がかかっているのだから、獣人を大いに利用せねば損だ。


そして納税の期日は昨日。

想定通り、納税はなかった。

これ幸いに、ゲイルは朝一番に十数人の兵士を集落へ送った。

半日もすれば、兵士は獣人を連れて戻ってくるはずだ。


出世までもうすぐ。

ゲイルは、ワクワクしながら兵士と獣人がやってくるのを待つのであった。


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