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ハヤブサの獣人の子どもイワンは、つい最近新たな仕事を手に入れた。
鳥人集落から歩いて30分ほどの洞穴に、新聞を一日に一回届ける仕事だ。
洞穴の中には、悪いことをして王都から追い出された貴族の女の子とその使用人が住んでいるらしい。
“らしい”というのは、まだその貴族の女の子にあったことがないからだ。
こんなどこまでも続く砂漠しかない場所(人間が住む街は歩いて半日もかかる!)で、しかも洞窟の中で生活しなければいけないなんて、どんな悪いことをしたのだろう?
しかも、使用人はたった二人!
人間のような見かけをした男(匂いからして人間じゃないけど、種族がわからない)と、狼の獣人の男だ。
怪しい奴らだと思いながらも、イワンはこの仕事をすることに決めた。
なぜなら、この仕事はイワンでも出来、かつ高給金であるからだ。
子どもであるイワンができる仕事は少なく、仕事があったとしても給金はとても低い。
イワンは、妹と二人きりで生活をしているから、イワンの稼ぎがなければ、大変なことになる。
だから、怪しいと思いつつ、イワンでもできるこの仕事をすると決めたのだ。
いつもイワンは、狼の獣人に新聞を渡し、その対価として3テイル貰う。
イワンが持って行く新聞は、10日も前のものだ。
それなのに、こんなにお金を払う貴族はやはりすごい。
新聞の価格は1テイルのため、残りの2テイルがイワンの給金だ。
2テイルあれば、数日分の大きなパン、それにチーズもしくはスープも十分に買うことができ、妹と一緒に食べていくには十分な給金だった。
だから、他の仕事では1食分賄えるかどうかの給金だった10歳の子どものイワンにとっては、この仕事はかなり高額な給金なのだ。
実は、ここ最近高額な給金を貰って仕事をしているのは、イワンだけではない。
イワンが新聞を届け終わり集落に戻ると、今度は集落の大人たちが洞窟に向かう。
大人たちも貴族の女の子に仕事をもらっているのだ。
大人たちの話によると、洞窟の中から苗木(なんの植物かは、わからない)を受け取り、洞窟近くの砂漠に植え、水やりをする仕事をしているそうだ。
3本の苗木を植え、水やりをすると一人20テイル貰える。
これは、このあたりの相場としては破格の給金だ。
大人たちも貴族の女の子の姿を見たことはないけれど、好意的な印象を持っている。
人間という種族は、獣人を見下し差別をする。
だから、人間が獣人を雇うとき、賃金は同じ仕事を人間で雇うときの10分の1というのも珍しくはない。
そのため、この国で獣人が生活をするのはとても厳しいのだ。
だが、この仕事量でこの給金を貰えるというならば食うにも困らないため、この仕事を与えてくれる彼女に好印象を持っているというわけだ。
今後もこの仕事が継続してもらえるならば、この砂漠地帯での生活から抜け出せる希望がある。
誰も好き好んでこんな何もない砂漠で生きているわけではない。
しかし残念ながら、そううまくはいかないのだ。
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