第2話『部活入るってよ』
翌日の職員室
担任「はあ結婚したい。出会いがない。明日から夏休みなのに。
この夏もひとりなのかなあ。」
駆け込む透也と孝介。
透也「行き遅れ先生! 大変です、出るんです!」
担任「は?」
透也「大変です、出るんです!」
担任「ちょっと待て、なんて言った?」
透也「出るんです。」
担任「じゃなくてその前。」
透也「大変です。」
担任「ま、いいか。で、なに?」
透也「出るんです。」
担任「なにが?」
透也「だから出るんですよ! 開かずの女子トイレに花子さんが。」
担任「はぁ?」(横に立つ孝介を見る)
孝介「(頷きながら)出たんです。」
担任「はあぁ~。あなたたち、開かずの女子トイレ入ったの?」
孝介「え? あ、はい。入りました。」
担任「男子トイレじゃなくて、女子トイレに?」
透也「はい、入りました! いえ、入口まで、先っぽだけ、ですかねえ。」
担任「わかったわ。あとで先生が確認しておくから、あなたたち2人、
女子トイレに二度と入らないでね。問題よ。」
透也「でも花子さんが!」
担任「あんたたち、今通信簿つけてんだから、全部赤点にするよ!」
透也「でも!」
担任「留年したいの?」
透也「花子さんの事が気になって夜も眠れ……」
孝介に引きづられて透也は出て行く。
担任「はあぁあ~。何が花子さんよ。いい男が出るなら、
今すぐ私も見に行くのに。」
学食
透也「あー明日から夏休みだー。花子さんの事が気になるー!」
孝介「知らねえよ! 俺は今日放送の最終回が気になる。
って留守録ちゃんとしてあったかなー。」
透也「どーしよー! 花子さんのことを助けたい!」
孝介「助けたいって、お前行き遅れ先生からもう女子トイレに入るなって
言われただろ。当たり前だけど。」
透也「入っちゃいけないのかなー? 女子トイレ。」
孝介「当たり前だろ。入れないよ!」
賢治「入りませんかー?」
孝介「だから入れないって言ってんじゃん。」
賢治「そんなこと言わないで入りませんか?」
孝介「だからー。」
透也「僕じゃない。」
顔を上げるとチラシを持った賢治がそこにいる。
賢治「映像研に入りませんかー?」
孝介「なにこれ?」
賢治「映像研の勧誘。」
孝介「今うち、それどころじゃないんだけどー。」
賢治「入ってよー。潰れちゃう。」
透也「ああーん。夏休み中も学校に来れたらな~。」
透也、ふと勧誘チラシを見る。
そこには『魔境探検肝試し』『お化けはいるのか?』等の過去実績作品名が書かれている。
透也「魔境探検肝試し? お化けはいるのか? なに、映像研って、そういうのやってんの?」
賢治「うん、ほぼそれ専門。UFOとか宇宙人とか。」
孝介「へー、そうなんだ。」
賢治「だから部員が全員逃げちゃって、今自分一人。」
孝介「だろうな。」
賢治「で、後期までに部員全部で3人にしないと、つぶれちゃうの。だから入って。」
孝介「んな事突然。」
賢治「入ってよー。」チラシをまじまじと見る透也。
透也「これだ!」
孝介「何が?」
透也「これだ!」
職員室
透也「行き遅れ先生! すみません!」
担任「は? 今なんと言った?」
透也「すみません。」
担任「いや、その前。」
透也「先生。」
担任「もうええわ。でなんだ。」
透也「自分たち、映像研に入ります!」
孝介「自分、たち?」
賢治「です。だそうです。」
担任「あ? 映像研は君一人で、もう廃部じゃなかったっけ? 明日から夏休みだし。
後期までに3人集まらなきゃ廃部。てかもう、廃部でしょ。」
賢治「だから今透也さんと孝介さんが入部してくれるんですよ。
ちょうどこれで3人。廃部は無しって事ですよね」
担任「まーそうなるけどさー。」
透也「これ、今から所属活動開始でいいんですよね?」
担任「まーそうなるけどなー。」
透也「活動計画案とか、必要なんですか?」
担任「まー、ないよりいいけど。なんでそんな焦ってんだ?」
透也「自分、今ここで提案します!
夏休み中の課外活動で『開かずの女子トイレの花子さんを探れ』ビデオの企画を!」
孝介「え?」
賢治「え?」
担任「え?」