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61 クリステル達はアレックスの因縁を断ち切る


 ~ヒナル視点~


 私とお兄ちゃんを繋げてくれた、お兄ちゃんの元彼女さんや幼馴染みの姉妹の人…。クリステルさん達が居なかったら、お兄ちゃんとはすれ違いのままだったかな…。


 私はクリステルさん達がまだ療養中だという治療院にやってきた。でも、3人とも居ないみたい…。担当の回復術士さんに聞いたけど用事があるからとここを離れている…。


 (もしかしたらあのクズのとこに!?)


 私は悪い予感がした。気が付いたら私は早歩きになって、犯罪者収容所へと向かっていた…。

 犯罪者収容所は王国東部の方にある赤いレンガの大きな塀に覆われた場所の中心部に位置する。

 私は大聖女という事もあり事情を看守の方に話をするとクリステルさん達は、ついさっきここに訪れ、中に入っていったみたいだ…。

 アレックスは重要犯罪者…。クリステルさん達以外にも被害を受けた女性が数多く存在していて…。中でも一番酷いのが、被害を受けて妊娠して産んでしまい、付き合っていた男性が怒ってその産んだ子を斬り刻み豚の餌にしてしまい捕まった人もいるという…。

 女性は気の毒だけど、その男性も可哀想な被害者でもある…。

 案内してくれた看守さんが…

 

 「実は俺もあれに恋人を寝取られた一人だ…。煮るなり焼くなり好きにしてくれ…。この事は黙っている」


 そういいつつ、何も知らないふりをしてその場を立ち去った。私は彼の重たい言葉を聞いたのと彼の落ち込みながら歩く姿を見て心苦しくなった…。

 やつのせいで人生を狂わされた人が沢山いるのは間違いない…。

 収容所の地下まで案内された私はそこから一人である部屋の前まで来る…。途中から3人の罵声とあのクズの会話が聞こえてくる。


 「魅了されたお前らが悪いだけでしょ~?僕はな~んも悪くない!」


 「お前!絶対殺すからな!」


 シューの声には鋭さがある…。本気で殺すつもりだ…。


 「私を玩んだ恨み…、貴様には…分からないはず…です。貴様がいなけば…、ルイスは… ルイスは…傷つくこともなかった!それに元に私も…。貴様さえ! …お前みたいな悪魔がいなければ!皆傷つかなかった!! 罪を…罪を償う前に私が貴様を殺します!!絶対に!」


 「僕を殺したとこで、ルイスは戻ってこないだろ!?何を今更?」


 「アレックス!私は赦し…ません!!アレックスのせいでお兄様は…!お兄様は!!どれだけ…どれだけ…! お兄様が辛かったか分かりますか?!」


 クリステルさんやエアロは少し泣きながら言う。凄くお兄ちゃんの事を思っているかヒシヒシと伝わってくる…。


 「ふん!どいつもこいつもルイスルイスルイスルイス!!昔からあいつが気にくわないんだよ!!誰もかれもがあいつ!!女も皆すぐアイツにぞっこんだ!!何故僕じゃない!?僕は勇者だぞ!!あんな無能の何がいいんだ!?だから奪ってやるんだ!」


 「貴様は最悪です!!何故にルイスが貴様に妬まれなくてはならいのです!!」

 

 「あいつが良い思いをしているからだよ!なにが悪い?!ははははっ!あんな無能は消えるべきだ!!僕があいつの全てを奪ってやるんだ! あいつは僕よりも剣術が上手かった! 可愛い女の子にも囲まれてやがった!僕が勇者なのにさ!?お前らも勇者の僕に抱かれて嬉しかったんだろ?!あんな無能に抱かれるよりも!!」


 本当にこのクズは最低だ。だからお兄ちゃんよりも劣るんだよ…。


 「ふんっ、お前が勇者!?ふざけるなっ!!勇者はなぁ!お前みたいなクズじゃないんだよっ!!! 兄貴が…、ルイスが勇者なんだよ!!お前みたいなクズは勇者にすらなれない雑魚なんだよ!!バカかお前は!」


 そういうとシューは、お兄ちゃんの事をバカにされた腹いせか手に持っている木の枝を弓につがえて放つ…。シューのスキルは並の人と違うのが良くわかる…。 木の枝なのにその貫通性は高く、アレックスの右足をもろに貫通する。


 「ギャアアアアアアっ!!」


 更にもう一発、またもう一発と木の枝を放つ。


 「ぎっ!! ぐぎゃあああああっ! イタッ!! やめ!!!おまえ!!!僕は勇者だっ!僕はユウシャ様だぞ~っ!!勇者を殺すつもりか!?」


 「お前は勇者じゃない!!勇者はお兄様です!お前は知らないんですか?! お兄様が勇者だと適切検査でも証明されました!!本当に平和ボケしているお花畑野郎ですね!!」


 「は?」


 エアロの言葉にあのクズは頓狂な声をあげる。


 「本当ですわ。それにルイスは聖剣にも認められた勇者です…。」


 「ま、まままま…マジ…!ぐぎぃ!」


 (きも…)


 私、自身でもこいつの仕草や態度を見ていると段々イラついてくる。


 「ぐぎぎぎぎぎっ…」


 気持ち悪いくらい歯ぎしりしてる。


 うん、この気持ち悪いヤツにトドメを刺すのは私…。私の大好きなお兄ちゃんを傷つけたこいつを私は許さない…。


 「ぐぎぎぎっ!!!」


 「マジだよ。このクズ」


 ヤツは私の顔を見るなり、いきなり表情が変わる。


 「だ、誰だ… お前は!?あっ… あの時の?!可愛い子!」


 「えっ!?ヒナルちゃん!?何故ここ…に?」


 「ヒナルちゃん?!」


 「どうしてヒナル様が?!」


 このクズは私の顔を見るなりニヤニヤしている。


 「私はお兄ちゃん…。いいえ、ルイスさんの実の妹で恋人の一人…。お前が私のお兄ちゃんを苦しめた。」


 「ふん!そう言えるのも今のうちだけだよ!」


 このクズはそうやって見栄を張り私に魅了をかけてくるが…。私には通用しない…。レベルの差があるからだ…。こいつにはもう勇者のバフがかかっていない。だから一般市民並の力しかない…。所詮は偽勇者だったって事。


 「あ、ありぇぇ?ありぇりぇ…な!なじぇ…何で魅了が効かない!?ま、前にもかけようとしたけど!」


 あー。やっぱりか。このクズは初対面の時にコイツを見た時に感じた違和感はこれだったんだ…。


 「間抜けな声だね。そんな気持ち悪い声で色んな人を口説いてたの?死んじゃえば?クズが

…」


 「ヒナルさん…。どうしてここに?」


 「お兄ちゃんから言われて来ました…」


 「る、ルイスさんが…」


 「兄貴が!?」


 「お兄様…」


 ちょっと嘘になっちゃうけど、そうしておきたかった…。彼女達の自殺を止めるためには…


 「お前は、私のお兄ちゃんを傷つけ、クリステルさん達も魅了で傷つけた。それ以外にもたくさんの人がお前みたいなクズに!」


 こいつから焦りの表情が現れる。気持ち悪い。


 「な、なぁ!僕は勇者だ!一緒に世界を救おう!!ねっ!?」


 「だから勇者は私のお兄ちゃんだって。聖剣にも認められてるんっすけどねー。おまえみたいなクズとは違うんだよ」


 「ぐぎぃ!ぐぎぎぎぎぎぎっ!ぐぎっ!」


 私はホーリーランスをイメージし詠唱し始める。こいつは許さない…。私がこいつを潰す…。


 「ひぃぃいいいい!!ま、待って!やめろ!!殺すな!!」


 「あんたは色んな人を不幸にさせてきた。罪は重いよ?」


 これがお兄ちゃんをバカにしていたやつ?この情けないくずれた顔をお兄ちゃんに見せてやりたい…。


 「ま、待ってください!ヒナルちゃん…。トドメは… トドメは私達に…」


 「えっ?」


 その時、エアロの表情が一気に変わり、アレックスの元へと駆け寄る。


「おまえ!!お前はヒナルちゃんまで悲しませるのか!お前みたいなヤツはもう死んじゃえーっ!!返せよ!!私とお兄様の思い出を返せっ!!!」


 エアロは両手を前に差し出し何かを詠唱する。両方の手から冷気が集まり一本の槍となり…。


 「アイスブラストっ!」


 「ひぃいいいあああああ!!やめ!ごめんなさい!ごめんなさい~~~っ!!!」


 その氷の槍は、クズの下半身を…。クズのクズの場所に当たり貫通する。


 「ぐぎゃあああああああああああああっ!!!」


 クズの下半身から大量の血が吹き出る…。


 「ぎぃぃぃぃ… ボグの…!"ボグの"ア"レ"が!!!!いだいいいいいい!!!やめ?!もうやめ!!」


 「ボクもまだ終わってない!!これはボクの恨みだっ!!」


 シューは牢屋の壁にかけてあった鉄の針を矢替わりにして放つ…。今度はそのクズの右腹を貫通させる。


 「ぎぃやあああああああっ!!」


 クズのうるさい悲鳴が牢屋をこだまさせる。


 「ヒナルちゃん…。ごめんなさい。私もヤツを赦せないのです…」


 クリステルさんは杖をトンと叩くと叩いた場所に白い光が集まってくる…。


 「これは浄化の魔法ですが、霊体じゃなくとも攻撃できる魔法スキルです…。」


 「ぼぅ、ぼぅじゅるじでぇぇぇえ!!」


 このクズは鼻水と涙で顔が酷いことになっている…。クリステルは詠唱をして光集まった場所に杖を起き…。光が杖に集まる。


 「ホワイトボール…」

 

 光が集まった杖をクズに振りかざすと…。光の玉が一直線にそのクズに飛んでいき…。クズの左足に当たる。


 「がぎゃああああああああっ!!」


 当たるとクズは倒れる。左足は跡形もなく原型をとどめない形になった。


 「貴様はもう後は、出血多量で死を待つだけです…。死んでルイスやヒナルちゃん達に懺悔して報いを受けなさい」


 「ボク達の恨みはこんなもんじゃないけどな」


 「私はまだ怒りが収まりません。お兄様を侮辱し私達を陥れた報いはまだまだたりませんっ!」


 「じゅ、ゆ、ゆるじゃないがらなぁあああああ!ぼぐわぁ!ボマエダチうぉ!じぇ、じぇっだい!ゆるじゃないがらなぁぁぁぁ!!ぐぎぎぎぎぎっ!!」


 クリステルさん達はクズの悲鳴やうめき声を無視してこの場から離れる…。私も一緒にその場を後にする…。クリステルさん達がこの後にする事はなんとなく分かる。必ず止めなければ…。


 

  

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