57 コタースとデート
あれから、やっと部屋に戻れた俺は、何かを企んでいる女子ども数名によって、明日はコタースとデートしてあげろ!となった。
ヒナルもそれは構わないらしく、私が正妻だからと、既に奥様気分だ…。
「皆、お兄ちゃんが好きらしい。だけど私が正妻ね!」
「りょ~かい!!」
なんて事を普通に言ってるし…。よくわからん。
俺がもし、ヒナルのいる世界で普通に暮らしてたら多分、こうはならなかったんだろうなぁ…。
それにしてもコタースと二人っきりって今まであまり無かったような…。
………。
……。
…。
翌朝、隣で一緒に寝ているヒナルを起こし、着替えをすませる。ヒナルはボケているのかベッドに座ってボーッとしている…。
今日はスルトも一緒だった。相変わらずの全裸だったが何回も見てきたため慣れてしまってい
た…。
支度を終えると、コタースが部屋にやってくる。
「おはよ~っ!ルイス~っ!ヒナル~っ!スルト~…は寝てるか…」
「あー、コタース!おはよ~!」
「ヒナル~ヒナル~っ? 昨日はウチに譲ってくれてありがと~っ!」
「コタースは大事な友達だし、色々助けてもくれたから次はコタースの番! お兄ちゃんを宜しくね?」
「任せて~!」
しっかりとおめかしされていて可愛い。茶色の髪に前髪はストレート…。長い髪を後ろで束ねて ちょっと派手な上着にデニムショートパンツ。お尻の上の方には小さいウサギの尻尾がぴょこっと生えている。
「じゃあ、行ってくるよ!」
「エスコートは任せてね~っ!ウチの方が詳しいし~!えへへ~っ!」
………。
……。
…。
「あ~っ!これなんか美味しそう!」
王国南部に位置する辺りは色々な出店が並んでいる。特にこの辺は様々な食べ物屋がずらりとならんでいて、丁度、昼前という事もあり沢山の人で賑わいを見せている。
コタースは特にスイーツには目がないらしく、ケーキやマカロンといったスイーツを一緒に見て楽しむ。
「あれなんだろう!?」
途中から良い匂いがしてきたから立ち寄ってみる。どうやらかなり前に異世界から来た店主が経営している"お好み焼き"と呼ばれる焼き物だ。
「ルイス~っ!あれ…食べたい~っ!…ダメ…かな~っ?」
「うん、いいよ!美味しそうだし!」
俺達はお好み焼き屋の前まで行くと、店主がいきなり…
「あんた!最近噂なっている勇者かい?!」
「まぁ…その…、そうです…」
「ははは!謙虚っぽそうで良い青年だ!」
頭に捻りハチマキをした髭を綺麗に整えた店主は鉄板の上で作っているお好み焼きという食べ物を作っている。キャベツや豚肉…海産物、コーン等も入れた柔らかそうなきじの食べ物だ。
「勇者の兄ちゃん!あんた~、やっぱり、あんたも迷人かい?」
「わかります?!」
「しかも日本人だろ?!俺は元々、日本で料理屋をやっていたんだ!」
「そうなんですか?!」
迷人はたくさん来ている。何故来ているのか不明だけど女神様が魔族を倒す為にこっちの世界に連れてくるとか聞いた事もあるが…。魔族ってそもそも倒さないといけないものなのか?しかも、こうやって、ここに来ても元いた世界に帰してくれるわけでもない…。
そう考えている内に…。
「ほら~!出来たぞ~!」
店主は 顔を にっ!とさせて2つ分のお好み焼きをわたしてくる。
「おじさん~っ、ありがと~っ!!」
「ありがとうございます!」
俺とコタースはお礼を言うものの…
「あはは!こうやって日本人が勇者やってんだ!何かの縁だ。一つ分の金額だけもらえれば良い! 可愛い彼女さんのはおまけだ!」
「ありがとう~っ!でもね~っ、うち…彼女みたいなものだけど~、この人にはね~っ、正妻は別にいるんだよ~っ!」
「えっ!?」
「はっ!?」
コタースの発言に俺は驚く。
「ははは!こっちの世界は多重婚ありだもんな!!俺達の居た世界じゃー考えられないからなぁー!やるな!勇者さん!」
「ははは…」
「じゃあ!毎度ありぃ~っ!」
色々と話題になりそう…。でもコタースが喜んでくれてるなら。そういえばコタースと一緒にこうして二人だけで居るのって今まであまり無かったよなぁ~…。
俺の横で一緒に歩いているコタースは、俺の手を握ってくる。俺もそっと握り返す…。
コタースを見ると顔を赤くさせながらニコッとこっちをみてくる。
ヒナルとはまた違う可愛さがある。ヒナルも愛しているが、コタースも正直に言って可愛い…。俺達が色々な店を見て回っていると一人の兵士が血相を変えて走りながら俺の元へとやってくる。
「勇者様!! 勇者様~っ!!」
王国の兵士だ。間違いない。何かあったのだろうか?
「やっと、見つけました!!申し訳ありません!!」
「何かあったんでしょうか?」
兵士はゼェーゼェーと息をきらしながら…
「あのカノープス隊長に勝利した実力を見込んでお願いがあります!!」
「えっ?ま、まぁ…話を詳しく聞きます。説明を…」
「少年隊の部隊が周りの哨戒任務にあたっていたのですが…、デスフラッグ数体に囲まれたと話があり…。現在も騎士団が向かっているのですが、中々歯がたたずで…どうか支援をお願いします!」
慌てる兵士を聞きき、コタースの顔を見る。
「うん~っ…、助けに行こう~っ!!」
「俺一人でもいいが、コタースはいいのか?少年隊の中にはお前を追い出したやつもいるんだろ?」
「だからこそだよ~っ!」
コタースの顔はやる気に満ちている。
「分かった!! 兵士さん、道案内を頼みます!!」
「勇者様!!ありがとうございます!!」
俺達は兵士に続き、街の外れへと向かうのだった…。




