49 ルイスの告白とその裏では…
~ヒナル視点~
ホテルで食事をしている。ちょっと前の時間…。噴水でクリステルさんとの会話を思い出す。
この世界では別に実の兄妹同士が恋愛しても誰も変に思わない…。クリステルさんの言葉に私は背中を押された。でも本当に大丈夫なのか?疑うわけじゃないけど…。
私は背徳感を感じる…。
それが本当に大丈夫なら今すぐにでも抱いてもらいたい…。でももう少し頭を整理したい…。
「ヒナル?ちょっと…良いかな?」
お兄ちゃんが私を呼ぶ…。お兄ちゃん…、私が本当の血の繋がった妹だって分かったら嫌いになるかな…。不安で不安で仕方がない…。
「うん!」
「ちょっとベランダに行こう?」
私はお兄ちゃんの後をついていく…。赤ちゃんの頃の写真しか見たことないレイジお兄ちゃんの顔…。赤ちゃんの頃の私と本当にそっくりだった。それが私の前にいるお兄ちゃんの肩を見ると大きくてたくましくて…。赤ちゃんの写真の頃のイメージとは違う…。お兄ちゃんの命日には必ず手を合わしていた…。
お兄ちゃんがもし生きていたら?お兄ちゃんと一緒にケンカもしたりしたのかな?…と想いに浸る日をよくあった。
ベランダに行くと辺りはもう真っ暗で、月明かりがとても綺麗な夜。周りには綺麗な緑色の蝋燭が何本かたっていてる…。
「ヒナル?俺の前の返事聞いてくれるかな?」
「うん!」
お兄ちゃん…。私が妹でごめんね?
「ヒナルと付き合っていきたい…。お前の事が好きだ…」
「…」
私は、何も言わずに…。お兄ちゃんの唇にキスをする…。何度も何度も…。そして舌を絡めて…。
「お兄さん…。私はお兄さんが大好き…。でも大事な問題が発覚したんだ…」
「えっ?」
お兄ちゃんは困惑する…。
「大好きだし、少し前ならちゃんと付き合うのをOKしてた…。ただあれから大きな問題事がわかっちゃった…。これは私だけでなくお兄さんの事にも深く関係してくる問題なんだ…。」
「俺の…問題にも?」
「うん! だから…、それがちゃんと解決してお兄さんに伝えれる時…。それでもいいなら私を受け止めてほしい…。だから今はちゃんと整理する時間がほしい…。でも不安にはならないで?」
「そっか…」
お兄ちゃんは目を閉じるけど、微笑みながら返してくれる…。
「お兄さんの事は凄く好きなのは本当だから…」
「うん…」
また私はお兄ちゃんの唇を奪う…。お兄ちゃんも私を抱き締めてくれる…。しばらくそんな幸せな時間が続いた…。
………。
……。
…。
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~???視点~
「どうなっているのか…、あの勇者のスキルを奪いアレックスに勇者の力を託したはずなのだが…」
「それもそうだが…、あのルシルもファデューも洗脳から解放されたそうだぞ…。どういう事だ?俺が目をつけていた女を奪い、棟梁の座を取った仁を取るために力をかしたんだぞ?」
大男がワシに迫りよってくる。
「勇者と大聖女でもないかぎりあの洗脳は解けないはずなんだがな…」
ふむ…。何が起こっている…。ちまたでは勇者の力を持つアレックスの力が消え"本来のジョブ"に戻ってしまった…。また、聖女も勇者の虜にしてしまえば、後はこっちから王国を攻めるだけだったんだがな…。あの忌まわしき国王に復讐するチャンスだったんじゃがなぁ…
この"魔族の女の力"を持ってしてもダメなのか?いや…もしくはこの女の夫であったアレの方がまだ良かったのか…?
あの夫は既に魔物と化してエルフ国を滅ぼしてくれた。この功績は実に素晴らしい…。
「して、お主…、これからどうするつもりだ?」
「こっちは攻める準備はいつでもできてる。いや、早くした方がいいだろう。何せ、ルシルもファデューも俺の事を探し回っている…」
大男は腕を組ながら答える。
「ふむ…。もう少し戦力がほしい…。いや…まてよ…。この薬を使えば…」
「誰か当てはあるのか?」
「ふぉふぉふぉ… アレックスだよ。アイツは誰かに対して憎悪を…かなりの憎しみを持っておる…」
ワシはとある薬を取り出し眺める。紫色の毒々しい薬だ。
「これは憎しみが強ければ強いだけ使用相手に力を授ける…。ヤツは今は王国に対しても憎しみの憎悪を持ち凄いだろう…?」
「…んで?誰がそれを渡しに行くんだ?」
「ワシで十分じゃろ?」
「はははは!!確かにアンタだとわかるはずがない!周りの奴らはただの美しい美女が来たとしか考えられねぇからな!」
ワシは借りものの体で両手でスカートの両端をたくしあげて顔を斜めにしながらお辞儀をする。
「アレックスに犯された者で文句をいいに来た…と伝えるまでよ…」
「ははは!アイツはこんな所まで役にたってくれるとは、とんだバカだぜ」
「アイツは人一倍性欲が強かったからのう…、まさかあそこまでアホだったとはわからなかったがなぁ~…ふぉふぉふぉふぉ!」
ワシはあの国が憎い。魔族協定というバカげた法律を作ろうとし、ワシの研究を蔑ろにした挙げ句、バカにしおった。しまいには何故、ワシは捕まらなければならぬ。魔族を実験代わりに使って何が悪いのか?
こうして素晴らしい実験結果ができておるではないか?!
エルフ国を襲わした…あのモンスターも元は魔族の男で一国の王だったやつだ…。なんでも魔王といわれていたとか。
そして、ワシの今、体に使っているのはその魔王の妃。とても高い魔法力を備えているからワシの魂もこうして分離せずにおる…。
それにしても…、こやつの娘はどこにいったのか…。まぁ…、力も封じたから別に何を足掻こうが知った事ではないがな…。
ワシは鏡を見ながら、この鬱陶しい赤色の髪を整える。鏡に映るこの者の目が悲しみに満ちた目をして笑いを堪えるのにやっとだった…。
「魔族はただの実験材料にしかすぎん…、それを証明させるため…、エルドアス王国を滅ぼす…。後、もう少しじゃ…」




