11 光と聖女
仕事の関係上、忙しく更新が遅れました。引き続き不定期でやっていきます。
ヒナルのいた辺りの場所から光の一本の筋が天空に伸びていく。次第に辺りが眩しい光に覆われていく。
(あれは…?)
嫌な予感というより、暖かい気持ちになれる不思議な光だ。俺はその光を目指して一目散に駆けていく…。
………。
……。
…。
事は少し前に遡る…。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
-ヒナル視点-
「ありがとうございます…」
「おう!お嬢ちゃんも気をつけろよ!」
私は、お兄さんと離れた後、村の人達と一緒に兵隊さんの宿舎に隠れていた。村の男性達は大きな何かと戦っているらしく負傷者も運ばれてくる。産まれて初めて見る重症をおった人達。本当なら逃げ出したいけど…。
(お兄さんが帰ってくるかもしれない…)
お兄さんは、たしかに強いから化物なんてすぐ倒してくれるはず…。そんな思いもあり、帰りを待つためにここに留まる。
(早く帰ってきて…、お兄さん…)
私は、目を強く瞑りながら心の中で何度も何度も何度も呟く…。その時だった…。
「道を空けてくれ!!緊急事態だ!!」
街の兵隊さんが血だらけの一人の少女を抱き抱えながら宿舎へと入ってきた。テーブルの上にベッドのシーツを広げ厚めの毛布を被せた。
「ゆ、ユリシアちゃん?!」
花屋さんのオバナさんの娘さんだった…。
「ユリシアちゃん!ユリシアちゃん!」
私は、ユリシアちゃんに何度も何度も名前を呼ぶけど返事がない…。
(お花?おねーちゃんにくれるの?)
(おねーたん、これあげるねー。おねーたんに似合うの!)
(ありがとう!ユリシアちゃん!)
黄色い、可愛らしいお花を私にくれた可愛らしい幼女…。私は泣きながら彼女を見る…。街のお医者さん達が真剣な表情をしながら心臓マッサージをする…。
「高級ポーションがあれば!!もしくは聖女様がいれば!!」
「聖女様は勇者とオーガ討伐に行っているはずだ!何をしているんだ!?」
あぁ…、あのお兄さんを小馬鹿にしていた…、あのメンバーの一人…。
私は咄嗟にユリシアちゃんに近づき祈る…。
(どうか…。 どうか!この世界の神様!!ユリシアちゃんを…)
私の胸の奥から温かい何か不思議な感覚が体を覆っている…。
(ユリシアちゃんを!!助けて!!!!)
そう思った時に、私の体が光だし、辺りを眩しい光で包み込む…。すると一人、また一人とケガした人達の傷が治っていく…。
(この光はなに?!皆が…!?)
「こ、この光は…?!クリステル様?!」
「いや、違う!そこの少女だ!!」
「んっ… 俺はオーガに…」
意識を取り戻す人も沢山いた…。私はユリシアちゃんを見る…。
「あっ…、あの時のおねーたん…?」
「ユリシアちゃん!?ユリシアちゃん!!良かった!!」
ユリシアちゃんのさっきまで酷かった傷も嘘のように無くなり消えていた…。
「貴女はまさか…、聖女様!?」
「い、いえ…、私は…」
「いやいや!こんな広範囲で回復魔法を使えるのは聖女様しか…」
「聖女様!ありがとうございます!!」
私の周りに色々な人達が集まる…。
「ユリシア~!!ユリシア!!」
ユリシアちゃんの名前を遠くから呼ぶ女性の声も聞こえた。ユリシアちゃんのお母さんのオバナさんだ…。
「ユリシア!! あぁ… ユリシア…!!良かった!良かったよっ!!」
オバナさんの姿が見え、駆け足でユリシアちゃんに近づいてきた。
「この方の魔法で治してくれたんだよ!」
兵隊さんがオバナさんに詳しく説明する…。私もいきなりの事だったし何が起きたか分からない状態だったけど、とりあえずユリシアちゃんが目を覚ましてくれて良かった…。
「あなただったのね…」
隣でユリシアちゃんの手を握っていたオバナさんが私の顔をみて涙ぐみながらにこやかに話かけてきた。
「ありがとう…!本当にありがとう!!」
「いえいえ!!私も何がなんだかわか…」
「た、大変だ!!」
私が喋りかけている途中、宿舎のドアを慌ただしく開けて兵隊の方が入ってきた。
「オーガの群れがこっちにもうじきやってくる!!さっきの光につれられてきたみたいだ!!」




