難易度調整②
〜〜〜
「くっ、者共狼狽えるな!!」
迫る、王都の危機。
それにイライザは声を張り上げる。
対処をしようとしている、兵たち。
その血相を変える者たちに対して。
しかし、兵たちは言うことを聞かない。
「黙れッ、俺たちはお前の言うことなんて聞かねぇ!!」
「新米国策士のあんたのことなんて信用してねぇからな!!」
「そうだッ、そうだ!!」
指揮をとろうとする、イライザ。
そのイライザを睨みつけ、兵たちは罵詈雑言を浴びせていく。
「なッ、なにを言う!! わたしは王により任命された国策士!! お前たちの上司だぞ!!」
「あ?」
「何様だ、お前」
「偉そうに、なんだ?」
「……っ」
イライザの難易度。
それはvery hard。
normalまでなら普通に言うことを聞くのだが、hard以上なら兵たちの信頼度をあげなければ言うことを聞かない。
「命令を聞いて欲しかったら土下座しろ!!」
「さっさとしろ!!」
「くっ。お、お前ら」
歯を食いしばる、イライザ。
しかしイライザは気づかない。
今のこの状況もまた、クロードの難易度調整の賜物であること。
それに、気づかないのであった。
〜〜〜
「さて、と」
王都より何不自由なく脱出し、小高い丘の上から王都を見つめるクロード。
魔物の大群と、竜巻。
そしてそれに続くようにドス黒い雷雲が王都へと迫っていた。
更にその雷雲の中には、王都を滅ぼさんとする雷竜もまた身を潜めている。
「中々、大変だな。今までの難易度easyが嘘みたいなvery hard。せめてnormalかhardぐらいにしてやったらよかったか?」
呟く、クロード。
「まっ、精々頑張ってくれ。これから更に他国からの侵攻。飢饉。地震とかも起こっちまうかもしれねぇが……ご愁傷様」
今まで何不自由なく繁栄してたのは、easyだったから。
普通に考えたら、おかしいぐらいのサクサク繁栄。
自然災害。
不景気。
その他の繁栄を妨げる要因。
それがこれからは容赦なくふりかかかる。
しかし、クロードには関係のないこと。
「俺はもう追放された身。この国がどうなろうと知ったことでない」
鼻で笑い、クロードは身体を反転。
そして後ろ手を振り、今までこの国に虐げられていた弱小国へとその意識を向け、その足を進めていったのであった。
サクサク繁栄。
「very easyも一度試してみるか」
そう、楽しそうに呟きながら。