難易度調整①
クロードが立ち去り、いつもの静寂に包まれた玉座の間。
王とイライザは互いに顔を見合わせ、ほくそ笑む。
「これで目障りな国策士が消えた」
「そうですわね。ふふふ。これでこの国はますます繁栄しますわ」
「うむ。あの者が居なともこの国は繁栄し続ける。そう。これからもずっとな」
響く、二人の笑い声。
しかし、それを打ち砕く血相を変えた衛兵の声。
「おッ、王よ!! たった今ッ、偵察兵からの情報によりますと城外の魔物たちが群をなしこちらに向かっているとのこと!!」
「なに!?」
「!?」
「それにッ、遥か彼方に巨大な竜巻が発生!! 一直線にこちらへ向かっております!! 災害対策を早急に!!」
矢継ぎ早に降り注ぐ、災難。
それに王は焦燥し、冷や汗を滲ませる。
そして。
「イライザよッ、今すぐ陣頭指揮をとるのだ!!」
「おッ、仰せのままに!!」
王の命。
それを受けイライザ自らも焦り、血相を変えて駆け出していったのであった。
しかし二人はまだ知らない。
自らの難易度。
それもまた、very heardになっているということを。
〜〜〜
血相を変え、焦燥に満ちる王都。
その中をクロードは、淡々と進む。
自らの難易度。
それをeasyモードに変更し、鼻歌を囀りながら。
「〜〜♪」
もはや自分には関係ない。
この王都がどうなろうと、どうでもいい。
そんなクロードの姿。
それにかかる、声。
「おいッ、クロード!!」
「ん?」
「どうしてお前がここに居る!? 国の窮地にも関わらずそんな呑気にッ、国策士として恥ずかしくないのか?」
「恥ずかしい? 俺はもうこの国の国策士じゃないからな。この国がどうなろうとどうでもいい」
飄々と吐き捨て、叫ぶ男の側を素通りしていくクロード。
そのクロードの肩。
それを掴み、男は叫ぶ。
「クロードッ、なんだその態度は!!」
振り上げられる、拳。
しかし、それを。
「難易度調整」
「あんたの難易度をvery heardに変更する」
「!?」
刹那。
男の頭上。
そこに竜巻により巻き上げられた石。
それが降り注ぐ。
「ぐはっ」
悲鳴をあげ、男は失神する。
そしてクロードは、「これからの人生、very heard。だが、くずけず。頑張ってくれよ」そう声をかけ、淡々と前へ前へと進んでいったのであった。