来訪者②
聳える、王城。
城門の前に居並ぶ、重装備の衛兵たち。そして屋根にはずらっと弓兵たち。
その光景。そこからは漂うは、城全体をあげ大きな迎撃戦を展開しそうな雰囲気だった。
まるで、こちらの動きを悟ったかのような動き。
それに、某国の始末屋は忌々しく舌打ちを鳴らす。
そして、胸中で呟く。
「No.125。己の命惜しさに、愚かな行動をとったな」
その、ゴウメイの呟き。
それに呼応し、ゴウメイの行手に現れる凄腕冒険家たち。
曰く。
「あんた城になにか用か?」
「初依頼は怪しい者の城への侵入を防ぐこと」
「報酬は莫大な金貨。受けない手はないわよね?」
剣の刃先を向ける剣聖。
拳を鳴らす拳聖。
そして、魔力のオーラを揺らす賢者。
その錚々(そうそう)たる面子が、ゴウメイへと敵意を向ける。
昨日、設立された冒険家ギルド。
そこにソリスを通じ依頼された美味しい依頼。
それに冒険家たちは飛びついた。
他にもぞろぞろと姿を現し、ゴウメイを囲み敵意を向けていく冒険家たち。
しかし、ゴウメイは笑う。
「俺になんの用だ?」
漆黒のローブ。
それを揺らし、ゴウメイは続ける。
「俺はただの旅人。城を見に来ただけだ」
そのゴウメイの言葉。
それは始末屋の情報のない者たちにとってみれば、信じることしかできない言葉。
しかし、彼等は信じない。
難易度がnormalまでなら、ゴウメイはこの場を素通りできたかもしれない。
だが、今のゴウメイの難易度。
それは、very very very hard。
「黙れ。てめぇ見るからに怪しいだろ」
「旅人? 俺の知ってる旅人はそんな格好しねぇぞ」
「つくならもっとマシな嘘をついたらどう?」
なので、ゴウメイがどんな言葉を吐こうと信じる者などいない。
その光景。
それに、ゴウメイは一時退却を企てる。
一歩。後退り--
しかし、そこに。
「逃がさないわよ?」
賢者の魔法が発動。
ゴウメイの背後。
そこの地面が盛り上がり、壁を形成。
完全にゴウメイの退路を断つ。
汗を滲ませる、ゴウメイ。
「さて、と」
響く剣聖の声。
それを皮切りに、冒険家たちはゴウメイへとにじり寄っていく。
更に、ゴウメイ一人に向け進軍を開始する兵士たち。
轟く、兵たちの雄叫び。
「……っ」
涙目になる、ゴウメイ。
その絶望的すぎる様相。
それはまさしく、ゴウメイにとってvery very very hardな状況だった。
〜〜〜
「報告ですッ、たった今冒険家の方々が不審者を捕らえたとのことです!!」
「無傷で捕らえたかったとのことですがッ、抵抗された為タコ殴りにしたとのこと!!」
「しかしッ、命に別状はない模様!! 話せる程度には生きています!!」
届いた吉報。
それに、メアリーは叫ぶ。
「素晴らしいのじゃ!! よくやったのうッ、者たち!!」
玉座の上。
そこに座ったまま拍手をし、興奮するメアリー。
そんなメアリーの側。
そこで、ソリスはクロードへと問いかける。
「クロード殿」
「はい」
「此度の侵入者に施した難易度。それはいかほどだったのでしょうか?」
「very very very hardです」
「左様でございますか」
「hardでもよかったのですが……スズの怯えよう。それを見て気合いをいれました」
響くクロードの声。そこには宿っている。
スズを守るという確固たる意思。それが、決して揺らぐことなく宿っていた。