スズ③
「クロードよ。おかえりなのじゃ」
「ただいま戻りました、メアリー様」
「それに」
クロードに手を繋がれたスズ。
その姿を見つめ、メアリーはにこりと笑う。
「スズもおかえりなのじゃ。どうじゃ? 腹は膨れたかの?」
事の真相。
それを知らないメアリーは、スズに優しく問いかける。
まるでスズの心に寄り添うようにして。
メアリーの問いかけ。
スズはそれに、その場に片膝をつき応える。
「ごめんなさい。スズ。悪いこと、しようとした」
「悪いこと? なんじゃ、それは」
「盗もうとした」
「なにをじゃ?」
「この国の情報。繁栄に関する情報。それを」
スズの告白。
それをメアリーは真剣な顔で聞き、そして声を発した。
「それは許せぬな。のう、ソリスよ」
「はい、許されざる行為です。この国の法律では終身刑でございます」
「うむ。スズを終身刑に処すのじゃ」
ソリスの言葉に首肯し、スズへと刑を言い渡すメアリー。
流石に無罪放免というわけにはいかない。
俯き。スズは刑を受け入れる。
そして、クロードへと視線を向けメアリーは更に続けた。
「クロードよ」
「はい」
「その者を牢へと連れてゆけ」
声を響かせ、メアリーはクロードへと命をくだす。
それにクロードは力を行使しようとした。
難易度調整
対象……スズの減刑
難易度……very hard→ easy
へと。
しかし、そこに。
「これは牢の鍵じゃ。持ってゆけ」
引き出しから鍵を取り出し、クロードへと柔らかく放り投げたメアリー。
その"客人室"と刻まれた鍵を受け取り、クロードはメアリーの真意を悟る。
「かしこまりました、メアリー様」
「うむ。決してその者をこの国から出してはならぬぞ。なにせ、その者は重罪人じゃからの」
微笑む、メアリー。
「スズ」
「…….」
クロードの声。
それに静かに頷き、スズはゆっくりと立ち上がる。
そのスズの手のひら。
クロードはそれを優しく握り、二人で執務室を後にした。
牢へと向かう為。スズに対し下された刑に真摯に向き合うようにして。
その二人の背。
それを見つめ、ソリスは声を発する。
「メアリー様」
「なんじゃ?」
「メアリー様が渡されたあの鍵。あれは」
「牢の鍵じゃ」
ソリスの言葉。
それにメアリーははっきりと応えた。
「紛れもなく牢の鍵じゃ」
「左様でございますか」
「時にソリスよ」
「はい」
「終身刑は重すぎたかの?」
「いえ。スズの身は我が国で確保しておくべきです。なにせ、重罪人ですので」
「うむ。そうじゃ、スズは重罪人じゃからな」
顔を見合わせ微笑む、二人。
その二人の姿。
それはどこか楽しそうで柔らかな雰囲気に包まれていた。