第七章 カジノの結果
連日カジノ漬けの日々を過ごしていた私が、息抜きにグランドキャニオンに行く計画を脳内で描き、床についた私が目覚めたのは昼の2時だった。先日宿に戻ってきて床についたのが深夜3時だったのと、連日の寝不足がたたり、一気に運んでもたらした結果であった。
時計を見て計画の変更をしなければならないどうにもならない現実を突き付けられ、残りの今日という日をどうしようか考えた。とりあえずシルク・ドゥ・ソレイユのマイケル・ジャクソンの申し込みをして、観に行った事と、ぼったくり価格のハンバーガーとスイートポテト【メニュー表示にポテト・スイートポテトとあって、日本で甘いポテトなんて食べられないからスイートポテトにしよう!と勇気を出して注文したのが運のつき……スイートポテトの正体は何と、サツマイモを油で揚げたものだった】を注文して食べた事以外はずーーーっとカジノをして過ごす一日となってしまった。
一瞬で消えていく、スロットに吸い込まれていく100ドル札はもう、私の目には玩具のお金しか見えなくなり、逆にスロットに吸い込まれて、けちょんけちょんに負けて行くことに苛立ちを通り越し、快感を覚えるようになってしまった。
当時の私は狂っていたとしか思えない。
その日一日で私は67万円という全財産を溶かしてしまった。即ち、少しの間生きていく為のお金と、帰国するくらいのお金しか残っていなかった。
ここで、当初の目的を思い出した。無一文になったのだから、死のう……と……
死ぬのならば、生まれ故郷日本に戻って死ぬか、アメリカのどこかで死ぬか、死に場所まで具体的にイメージした。当時の私には、生きる希望も活力ももう何もかもアメリカンドリームに奪われ、なくなってしまっていた。枯渇する心、麻痺する心……涙すら流れなかった。それくらい私の気持ちは自分の人生を終わらせる方向にシフトしていた。
でも、死ぬ前に一度だけグランドキャニオンを拝んでみたい。それくらいしてもバチは当たらないよね?
その気持ちだけが私を次の日へと生かす活力となった。
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