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るう子の雑記帳

本の自己主張 ちょっとだけ不思議

作者: 工藤るう子



 ん十年前のことです。

 それほど特別なことじゃなく、読書好きのひとなら経験しているんじゃないかなと思うんですが。


 当時、卒業していたコバルト文庫だったのですが、知人から薦められた『炎の蜃気楼』を読んで立ち戻っていたんですよね。

 誰だったかな、前田珠子さんとか、榎木さん? 榎本さん? だったか、後金蓮花さんとかをあれこれ手にとってたりしていた頃です。その中でも嵌っていたのが、金蓮花さんの『月の系譜』シリーズでした。結構コンスタントに出版されていたっていうのもありましてvv


 おそらくですが、『炎の蜃気楼』以外で読んでいたのは全部大人の事情とかで完結しなかった気がしますが、どうなんでしょうね。前田珠子さんの『女神さまのお気の向くまま』は3巻で止まってるのかな? これしか読んでないんですけどね。榎木さんか榎本さんは、短編で演技派の少女女優さんが主人公の話しか読んでない気がします。金蓮花さんも『月の系譜』だけですね。桑原水菜さんは結局『炎の蜃気楼』仰木君バージョンを全巻読んだだけですが。


 ともあれ。


 あの時、ちょうど気を引かれる本がなくてですね。自前の本棚にもこれを再読したい! っていう感情が動くのもなく、読んでいた本の次の巻が出る時期でもなく。でも何かが読みたいっていう欲だけはあって、そういえばあの道に行ったことのない本屋さんがあったなぁって思い出しまして、ドライブがてら車を走らせたわけです。

 で、です。

 店のドアを一歩潜るか潜らないかで、なぜかかなり向こうにある書棚に陳列されてる1冊が金色に光っているのが目に飛び込んできたのですよ。


 別に天窓があるわけでもなく。

 窓があっても角度的に反射する角度じゃなく。

 背表紙の文字が読めないどころか、文字が見えもしない距離でした。その書棚にどこの文庫が陳列されているのかも初めての本屋さんだからわかるはずもなく。

 なんだろう? 首を捻りながらそこに向かってみました。

 そうしたらですよ。

 金蓮花さんの『月の系譜』の新刊でもない読んでもいない、存在すら知らなかったタイトルがあったのですよ。

 あの時のコバルト文庫のカバーの返しには作者さんの著作がちゃんと載ってたりしましたが、時々取り落としとかもあったらしくてですね、『月の系譜』既刊は読破した! って満足感を覚えてるタイミングだったんですよね〜。

 あれ? ってなもんです。

 これ知らんがな〜って買いましたよ。読みましたとも。なぜだかこのシリーズと桑原さんの『炎の蜃気楼』の主人公主従はもう、関係が冷え切っているというかギクシャクというか読んでるこちらがしんどいくらいの関係だったりしたのですが、頑張りましたとも。好きなキャラが最後あれ? ってな状況に陥りましたが、このキャラ最後までもう出なかったよね? とかってショック受けましたが、読み切りましたとも。ええ!


 だんだん主題がずれてきましたが。


 そんなこんなで、心眼がいきなり目覚めたというのか、本が「ここにいるよ!」って自己主張したのか、正直わかりませんけれど。突然のちょっとだけ不思議な出来事だったのでした。

 


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