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雪希はひとしきり泣いた後、僕に向き合って言った。
「ねえ桃鬼、私に、魔術を教えて。」
「いいけど、覚えてどうするんだ?」
「奴らを殺す。父さんができなかったことを、やり遂げて見せる。」
雪希の目は決意に満ちていた。ただ、
「駄目だ。」そう僕は言った。
「なんで?私じゃ力不足?」
「いや、僕が雪希を守れない。」
「大丈夫だよ。私の両親も魔術師だったんでしょ?なら適正だってあるはずじゃない?」
ぐうの音も出ない正論だった。
「わかった。魔術を教える。ただし一つだけ約束してほしいんだ。」
「どんな?」
「お願いだから、魔術戦闘で死なないで欲しい。そんな事になったら、僕は僕を許せなくなってしまう。」
「わかった。任せて。」
こうして、彼女は復讐のために魔術を使うことを決意した。
◆○●◇
「雪希、上手くなったな。」
1ヶ月後、雪希の魔術はそこそこの魔術師など相手じゃないレベルまで成長していた。
「雪希様の両親は等級の高い魔術師でしたから当然です。ボス、あまり見くびらないであげてください。」
彼女は七緒、雪希の師匠兼親友で、雪希の又従兄弟に当たる。
「桃鬼!」雪希が駆け寄ってくる。
「どう?私魔術結構上手くなったでしょ?」
「ああ。そこら辺の魔術師なら相手じゃないレベルだ。」
「ほんと?私も桃鬼と一緒に外出てもいい?」
「当然だ。」
実は桃鬼も雪希と一緒に外にでかけたくて仕方なかったのだ。
このとき魔術師としての桃鬼と雪希との生活が幕を開けたのだ。




