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僕の携帯に電話がかかってきた。
雪希からだ。
「桃鬼!助けて!父さんが!」
「雪希、何があったんだ?」
「父さんが襲われて..」
そこで電話は途切れた。
雪希が危ない。そう思い僕はすぐに家を出た。
僕の家から直進、公園で右折、コンビニの先の交差点で左折...
「君、少し止まれ。」
そこで初めて見る長身の青年が桃鬼の前に立ち塞がった。
瞬間、辺りが闇に包まれ、僕とその男以外の人影が見えなくなる。
「すいません僕、急がないといけないんです。」
「ほう、この状況で私を無視して先に行きたいと言うか。肝は座っているようだね。」
正直、この男が何を言っているのかを桃鬼は全く理解できなかった。
「だが君を通すことはできない。私はそう頼まれているからね。」
「嫌だと言ったら?」
「君を殺すまでだ。あの少女の両親と一緒にね。」
「あの少女?雪希か?」
「ああ。彼女の両親は僕らの世界を潰そうとしている組織の幹部でね、だから殺す必要がある。」
「雪希はどうするつもりだ?」
「彼女に恨みはないが、両親を殺したことを恨んで僕らを殺しに来るだろう。」
「だから殺すと?」
「そうだ。」
「なら、」
「なら?」
「僕はあなたたちが雪希を殺す前に、あなた達全員を殺そう。」
青年は声を上げて笑った。
「はははは、いいじゃないか。できるものならやってみたまえ。」
僕は心の中で謝る。
雪希、君の両親を僕の組織に編成して悪かった。
奴らの手際なら、もう雪希の両親は息を引き取っているだろう。
そして僕は誓う。
雪希、あなただけは絶対に、何があっても死なせない。
そして青年に向けて言い放つ。
「相手が悪かったな、僕はこれでもあの組織の長だ。貴様のような雑魚はとっとと片付けて、雪希を救い出してやる。」
「ありえない。貴様のようなガキなどが」
青年の言葉は桃鬼の呪文によってかき消された。
「【黎明】」
闇に染まった世界が、一瞬にして明かりを取り戻す。
「喜べ、僕が直々に天に還してやる」
「調子に乗るなよ」
青年が反論し、その手に剣を顕現させる。
しかし、青年の攻撃は桃鬼にとってあまりに遅すぎた。
刹那、桃鬼の手が青年の胸を貫き、青年は目を閉じた。




