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異世界クイズ  作者: 畑山
24/29

三回戦前半

 お手つきで、二問解答権を失ったベン・シャポルは腕を組んで椅子にもたれていた。

 二問休憩をどう捉えるか。

 解答者七名、枠は四名、三問正解すれば決勝進出、二問休憩は侮っていいものではない。とはいえ、失格になるわけでもない。気軽に押せるが、二回休むぐらいなら、二回慎重に問題を答えた方がいいという考え方もできる。

「第四問」

 どちらにしろ押さないことには勝ちはない。

「いざ行かん、血の海、首を挙げよ」

 なんだこれ。

「などの単語が含まれる国歌を」

 ポン!

「七番、マリー・ペテルさん」

「えーと」

 マリー・ペテルが横で、うろたえた表情を見せている。おそらく、押してから、国歌の題名と国の名前、二つの解答がある可能性に気がついたのだろう。

 国歌を持つ国の名前はなんでしょうと、続くのが自然だとおもうが、国歌の題名を問う問題も可能性としてはある。他国の国歌の題名は問題として難しいと思うが、難問が出てもおかしくはない。八割国名だと思うけど、どうだろう。

「テロトル中立国」

 マリー・ペテルが答えた。

 どうだ。

「正解です。いざ行かん、血の海、首を挙げよ、などの単語が含まれる国歌を持つ国はどこでしょう? テロトル中立国でした」

 拍手が起こる。

 マリー・ペテルは、観客席に向けて小さく手を振っていた。

 観客席にマリー・ペテルと同じ年頃の手を振っている女性が二人いた。おそらく一緒に参加していた友人だろう。

「第五問」

 そろそろ押していかないと。

「タマス湖周辺に」

 レタ市とアゴロ市をまたがる湖だ。

「点在する遺跡をなん」

 押した。

「六番、テンヒル・バーナーさん」

 俺だ。

「魚人遺跡」

「正解です。タマス湖周辺に、点在する遺跡をなんと言うでしょうか。魚人遺跡です。テンヒル・バーナーさん一ポイント獲得、二問経過しましたので、ベン・シャポルさんのペナルティーが終わり、解答権が復活します」

 後のホワイトボードに書かれているベン・シャポルの名前の上にある赤い×を、運営スタッフが布でこすって消した。

 ベン・シャポルは、両の肩を回し解答ボタンの上に手を置いた。

 魚人遺跡は、数万年前に絶滅した魚人という半水棲人種が生活していた痕跡がある遺跡である。炭や衣類が残っていることから、かなり文化的な生活を行っていたのではないかと思われている。

 少し、ほんのわずかだが、ボタンを押すのが遅れた。本来なら、なんというでしょうの、な、が出た段階で押せていたはずだ。

 意識は0.5秒遅れてやってくる。

 トール・ノーレットランダーシュ著、『ユーザーイリュージョン意識という名の幻想』著書の中でノーレットランダーシュは、意識は0.5秒遅れてやってくる。と述べている。しかも、俺の場合は異世界経由だ。異世界の情報をテンヒルさんの脳を介して、俺の意識へ、そこからさらに、テンヒルさんの脳に行動を命令する。老人の反射神経の問題だけではなく、意識の遅れも加味されていると考えるべきだろう。

「第六問」

 集中集中。

「魔力が魔術に変化する際」

 どっちだ。

「無駄な魔力が出る」

 発散か残留。

 どっちだ。

 ポン! 

 誰かが押した。

「二番、フリット・デンバーさん」

「発散」

「正解です。魔力が魔術に変化する際、無駄な魔力が出る現象をなんというでしょうか。答えは、発散です。二番、フリット・デンバーさん一ポイント獲得、合計二ポイントです。フリット・デンバーさん、後一問正解すれば決勝進出です」

 フリット・デンバーは笑みを浮かべた。

 残留は、魔術式に残ってしまう魔力をさす。無駄な魔力が出る現象を発散と言いますが、残る魔力をなんというでしょう。という、引っかけ問題の可能性があった。フリット・デンバーは、答えが一つしか、思いつかなかったのだろうか、それとも、一か八かで答えたのだろうか。

「第七問」

 よし来い。

「長らくお世話になりました。で始まる」

 小説か。

「六百年ほど前に書かれた」

 じいさんの記憶からは、なにも出てこない。

「退職する衛兵の手紙をなんというでしょうか」

 ポン!

「三番、ローレット・レレンさん」

「シュレ・バリウス・バレリィの別れの挨拶」

「正解です。長らくお世話になりました。で始まる、六百年ほど前に書かれた退職する衛兵の手紙をなんというでしょうか。シュレ・バリウス・バレリィの別れの挨拶です。ローレット・レレンさん一ポイント獲得です」

 全く知らない話だ。六百年前となると、エルフのローレット・レレンさんなら、生きていてもおかしくはない。何歳なんだろうか。テンヒルさんには悪いけど、どうせ憑依するなら、こんな、よぼよぼのじいさんよりもエルフの方が良かった。

「第八問」

 ま、しかたないか。

「世界最大の魔物は」

 目の端でベン・シャポルがぴくりと動いたのが見えたが、とどまったようだ。引っかけ問題を警戒したのだろう。

 俺は押した。

「六番、テンヒル・バーナーさん」

 引っかけじゃねぇのか。という顔でベン・シャポルはこちらを見ている。間違いなく引っかけだ。つまりその逆。

「ミクロネズミ」

 答えた。

 司会のセレ・ハリスが少しためた。

「お見事、正解です。世界最大の魔物はゾフラエス海竜ですが、世界最小の魔物は何? ミクロネズミでした。テンヒル・バーナーさん一ポイント獲得で合計二ポイント、後一問正解で決勝進出です」

 観客席を見るとエレナがうれしそうな顔で拍手をしてくれている。


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