二次予選
八問目が終わった。
まだ答えられていなかった。答えがわからないというわけではない。ボタンは何度も押しているが、押し負けている。これだけの人数がいる。問題を最後まで聞き、用意ドン、で押せば当然、七十八歳の高齢者には不利になる。手が遅い。本来の俺なら、答えが浮かんだと思った瞬間ボタンを押していて、答えが頭の中で形取り、解答権を得た後、言葉となって出てくる。遅いのだ。ほんのわずかな遅れだが、これだけ人数がいて用意ドンの早押しでは厳しい。
問題の途中で答えることも考えたが、一発退場となると恐い。この手の形式で引っかけ問題はないと思うが、絶対無いとは言い切れない。一問間違えただけで退場だ。引っかけ問題で退場は、かわいそうだと、主催者側も考えるはずだ。現に今まで引っかけ問題はない。とはいえ、百パーセントそうだとはいえない。やはり問題をすべて聞ききった上で答えるべきだとは思うが、それで勝てるのかという問題もある。
後七問ある。
お手つきで退場した人間はいないため、残りは俺も含めて二十一人、人数が減っていくほど押し勝つ可能性は増えていく。焦るな、確実に、一問だけで良いんだ。しわだらけの指をほぐしボタンの上にのせる。
「では、九問目です」
さぁこい。
「メイムス山脈を通り」
地理問題、道か。アルバル道、カクセ山道、セムル、ちょっと多いな。
「ソテク市とハルケリホ市を結ぶ」
通り。結ぶ。トンネルか。アイジャッホトンネルか。押すか。押すか。
「トンネルを、アイジャッホトンネルと言いますが」
おお、やばい引っかけ問題じゃないか。ここで出すかよ。押しかけたぞ。
「その、アイジャッホトンネル開通に多額の資金を出した人物は誰?」
資金、わからんな。誰か有名人が出したのだろうか。アイジャッホトンネル自体は百年ほど前に掘られたはずだが、誰だろう。ソテク市とハルケリホ市にゆかりのある有名な人物、だめだ出てこない。
誰もボタンを押す人間は現れなかった。
「残念。正解は、エディ・コーエンです。エディ商会の創設者です。当時ソテク市の貴族であったエディ・コーエンは私財を投じて、アイジャッホトンネル開通に尽力しました」
といいながら、レムンスは笑った。
身内問題かよ。誰がそんなこと知ってる。まぁ、企業主催のモンド大会だから、そういうのもありなんだろうけど、てか、このパターン、何回かあるってことだよな。しかも、引っかけ問題、めんどくさいことしやがって、くそ。
「では、十問目です」
さっきは正解者が出なかったから、残りは七問、残っている人数は二十一人と変わらず。
「シャンダール、エペペルナ」
名前だ。動物、なんだけって。
「フナスキン、などの種類がある動物はなに」
蛇だ! 俺はボタンを押した。
ランプがつく。
「はい、四十二番」
俺じゃない。俺は百二十二番だ。
「トカゲ」
四十二番の男が答えた。
「残念、不正解です。正解は蛇です。四十二番の方、大変残念ですが、失格となります」
四十二番の男は天を仰いだ。
荷物をまとめ会場から出て行った。
残りは七問と変わらず、不正解で失格者が出たため、人数は二十名に減った。
「では、十一問目です」
「トロア語で、たくさんを意味する」
語源か。
「樹暦五百年頃に流行った、小さな窓を組み合わせた」
建築、ペロイド、ペロイド様式か。
「建築様式を、な」
押した。いくつかボタンを押す音がする。ライトがつく。
「はい、百二十二番の方どうぞ」
よし! 俺だ。押し勝った。
だが、あってるのか。引っかけじゃないよな、建築様式を、なんというでしょうか。だよな、焦って、ちょっと早めにボタンを押してしまった。はずれたら終わりだ。
「ペ、ペロイド様式」
答えた。
「正解です。トロア語で、たくさんを意味する樹暦五百年頃に流行った小さな窓を組み合わせた建築様式を、なんというでしょうか。ペロイド様式です。百二十二番の方、二次予選突破です。おめでとうございます。では、こちらの方で新しい番号を受け取り、三次予選が始まるまで外でお待ちください」
俺は安堵のため息をついて、席を立った。
運営のスタッフから、三十九番の番号を渡された。




