第二次予選開始
「いらないですか」
「ええ、全部テンヒルさんの知識を元に答えを出してますから、いらないと言うより、いない方がいいくらいです」
俺は言った。
「その、それはまずいのでは」
ヘングレーは困ったような顔をした。そりゃそうだ。モンド大会に出るためにわざわざ神様が召喚したのに、役に立たないなんてなったら、まずくはないが、意味がない。
「筆記問題ではそうでしょうね」
「それ以外では違うと」
「ええ、二次予選からは早押し問題です」
「どう違うのです」
「早押し問題は知識だけではだめなんです。もちろん知識は必要ですが、問題を先読みする力が必要になってきます」
「それが、サカキ君にはあると」
「ええ、あります」
この世界で早押し問題が生まれたのは五、六年前である。モンドそのものの研究は、まだ未熟なのではないかと、思っている。
「そうよ。おじいちゃん、この場合はサカキさんか。問題を最後まで聞かずに途中で答えちゃうのよ」
エレナが自慢げに言った。
「なるほど、問題の内容を先読みしながら、テンヒルさんと共有して、問題をより早く解いていく。サカキ君の知識がそこで生かされるわけですね」
「そう、なってくれるとありがたいです」
それを狙って、神様は俺をこの世界に呼んだのだ。魔王を倒すのでもなく、冒険者として自由に生きるわけでもなく、早押し問題を、ちょっとばかり早く答えるために、俺はこの世界に呼ばれたのだ。たぶん。
二次予選のため、ラトスに行かなければ行かない時間になってきたため、ヘングレーには帰ってもらった。応援に行きたいんですけど仕事がありますんでと、ヘングレーは帰った。
一時間ほどかけ、ラトスにつき、エレナと黒猫のテンヒルさんと一緒に予選会場へ向かった。昨日訪れた同じホテルだ。
「おじいちゃん、がんばってね」
エレナが手を振った。
「いってくるよ」
俺は手を振り返した。
一次予選を突破した百十六人を四つのグループに分け、それぞれのグループで早押しで決める。俺はCグループに入っている。
ABCD、四つのグループが、別々の部屋に案内された。学校の教室程度の広さで、Cグループ二十九人が長テーブルに備え付けらた椅子に座った。テーブルには、第一次予選の時にもらった番号が貼られており、解答ボタンが置かれている。
クイズの読み手らしい人が、ルールを説明してくれた。
二次予選を突破できる人数は十五名、早押しで、一問正解したら予選通過となる。答えを間違えた場合、失格となり、退場となる。
参加人数を減らすことを目的としているのだろうが早押しで、お手つき一回で失格は、けっこう厳しいルールだ。どこかで勝負をかけなければならなくなるかもしれない。
全員でボタンの動作確認を行った。手のひらサイズの大きさで、遊びが多く感触はかためだった。テーブルの上、予選番号が貼り付けられている辺りにランプがあり、解答権を得た場合、ランプが点灯する仕組みになっているのだろう。音は鳴らないようだ。
会場には、大きな壁時計が備え付けられている。針が進む。徐々にざわつきが減っていく。
午後二時、開始時間になった。
「では、第二次予選を始めたいと思います。問題を読ませていただくレムンスです。よろしくお願いします」
ぱらぱらと拍手が鳴る。レムンスは背の高い中年の男だ。声は低く、聞き取りやすかった。
「では、第一問」
静かになる。背を曲げボタンに軽く手を乗せた。
「第二十三回、カッペリオール国際大会にて」
スポーツ問題か。
「ペンチャー世界記録を出し優勝した選手は誰」
ボタンを叩く音があちこちで上がった。ペンチャーは、トライアスロンのような競技で、こちらの世界では非常に人気があるそうだが、あいにく、テンヒルさんは、全く興味がない。
「はい、七十五番」
レムンスが指さした。
「トレオ・バルゴーニ」
「正解。七十五番の方、二次予選突破です。おめでとうございます。では、こちらの方で新しい番号を受け取り、三次予選が始まるまで外でお待ちください」
七十五番の男は、運営スタッフから新たな番号札をもらい、会場の外へ出て行った。
「では、次の問題にまいりたいと思います」
いきなりスポーツ問題と、相性の悪い問題が出てきたが、まだ一問目だ。焦ることはない。しっかりと問題を聞いて、確実に答えられる問題を解答していこう。耳を澄ませた。




