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異世界クイズ  作者: 畑山
16/29

一次予選突破

 一次予選の結果が出るまでの、時間が空いていたので、エレナと一緒に観光やショッピングを楽しむことにした。

 とはいえ、頭の片隅には、予選の結果が気になっていた。だからといって、楽しんでいなかったなどと言うことはない。俺の意識は、予選の結果が気になっていたが、じいさんの脳はしっかり、孫娘とのデートを楽しんでいた。気楽なもんである。

 足湯に浸り、ええのうと、テンヒルさんの脳がぼんやりしていると、エレナが、そろそろ結果が出ているんじゃないのと、言った。

「おお、そうじゃな」

 いそいそと足をハンカチで拭き、少し濡れていたが気にせず靴下と靴を履いて、予選会場のホテルに向かった。

 早く結果が知りたいと思いつつも、不安が頭をよぎった。俺とじいさん両方の不安が混ざっているのだろうか。いやな汗が出ていた。

 会場から出て行く人の表情は、ばらばらで、笑みを浮かべている人もいれば、肩を落としている人もいた。中に入り、人をかき分け、予選結果が張り出されている掲示板を見た。

「百二十二、百二十二」

 俺は目を細め、自分の番号を探した。

「おじいちゃん! 百二十二番! あったよ!」

 エレナが指をさしながらいった。

「どこだ。おっ、おっ、あった。あった」

 確かにあった。百二十二番と確かにあった。

「すごい、おじいちゃん! よかったね!」

「おう、おう、そうじゃな」

 手を握って笑いあった。かごの中にいる黒猫のテンヒルさんも、にゃーにゃー、と鳴きながら、かごの中を転がった。 


 予選会場の受け付けに行き、予選番号が書かれた紙を見せると、予選通過書を渡された。予選番号はそのまま使うようだ。

 帰りに、予選通過お祝いと称して、少し高そうなお店で食事をした。それから一時間ほどかけて村に帰った。

 満足のいく一日だった。


 


 次の日、いつもより遅く起きた。やはり疲れていたのだろうか。朝からけだるかった。

「エレナ、おはよう」

「おじいちゃん、おはよう」

 エレナが俺の朝ご飯を用意しながら言った。テーブルを見ると、なぜか、医者のヘングレーが座っていた。

「おはようございます」

 ヘングレーが紅茶を飲みながら言った。

「おはようございます」

 俺はいつもの自分の席に座った。スクランブルエッグにベーコン、ロールパンに野菜スープがあった。

「一次予選突破おめでとうございます」

「ありがとうございます。今日はどうしたんですか」

「いやあ、気になっちゃって、医者としても、ものすごく珍しい症例ですからね。様子をうかがいに来たんです」

「そうか。ヘングレーは、医者としては信用できるが、人としては、あまり信用できんからのう。おっと」

 つい、思っていることが口に出てしまった。俺が思っていると言うより、じいさんが日頃思っていたことを口に出してしまったというところか。黒猫のテンヒルさんも、同意するかのように、ソファーの上で、にゃー、と鳴いた。

「ひ、ひどいなぁ。今のはテンヒルさんですね。そういう風に思っていたんですね」 

 ヘングレーは悲しそうな顔をしたが、どうということはない。テンヒルさんは老い先短いし、俺は、この世界の人間ではない。今、医者として仕事をしてくれれば、ヘングレーと良い人間関係を構築する必要性など、どこにもないのだ。

「そうですね。いろいろとテンヒルさんの記憶にありますからね。話は、食事しながらで良いですか」

 エレナは、すでに食事を終えているようだ。今日はこの後、二次予選三次予選がある。あまりゆっくりしていられない。

「ええ、いや、食後で良いですよ。医者として、患者の食事を邪魔するわけにもいきませんからね」

 すねたような口調で言った。


「それで、何が聞きたいんです」

 食後、ヘングレーに言った。

「予選はどうでしたか。筆記問題だったとか」

「それほど、難しくはなかったですね。まだ一次予選なんで、何とも言えませんが」

「どういう風にして問題を解いていったんです。サカキ君の意識とテンヒルさんの記憶、どういう流れで答えを導き出しているのです」

「難しい質問ですね。読んだ問題を理解し、テンヒルさんの記憶の中から、テンヒルさんの脳が適切な解答を選び出し、それを、俺の意識が受け取り、答えをかく。そんな感じですかね」

 自分の意識とテンヒルさんの脳がどういう風に繋がっているのか、自分でも、よくわからない部分があった。

「問題の意味を理解したのは、サカキ君なんでしょうか。それともテンヒルさんなのでしょうか」

「うーん、どうなんだろう。まず、問題を俺が理解するためには、テンヒルさんの記憶が必要なわけで、問題の内容を、テンヒルさんの記憶に問い合わせながら、理解を進め、その理解した内容をテンヒルさんに渡し、浮かび上がっていく記憶の中から、答えを出していく。両方ですかね。両方交互に問題を理解し合っていくような感じですかね」

「なるほど」

 ヘングレーは思案げな表情をした。

「たとえば、エリッツで作られているバラリの国内生産量は何位でしょうか。という問題があったとします。まず、エリッツと読んだ時点で、エリッツに関するおよそのイメージのようなものが出てきます。アラク湖のこととか、街道とか、テンヒルさんの記憶の中のエリッツのイメージがでてきます。作られている、と読んだ時点で、生産に関する問題だと理解します。その後、バラリと聞いて、バラリの丸くて茶色い映像が浮かび、作られているとかかれていることから、生産量の問題だとわかり、何位という字を見ると、バラリの生産グラフが思い浮かんで、一位が四十パーセント近くを占めるトルン、二位がバイデ、三位がエリッツだったかな、という感じで、答えが出てきます」

 バラリはジャガイモのような野菜だ。

「その、気を悪くしないで欲しいんですが、今の話を伺う限り、サカキ君の意識はいらないんじゃないですかね。回りくどいっていうか、テンヒルさん一人で答えを出した方が早いような気がしますが」

 ヘングレーは申し訳なさそうに言った。

「ええ、いりませんね」

 俺は答えた。



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