モンドの練習
「えーと、樹歴1578年、テルプルと、グリコンヌの二重」
俺は机を叩いた。
「えっ、はい、おじいちゃん!」
「レオ・ドヘイク」
「せ、正解! どうして問題を全部読んでいないのに、わかったの」
エレナが驚いた表情を見せた。エレナに頼んで、モンドが書かれた本を買ってきてもらい。それを読んでもらっている。
「樹暦1578年に、テルプルとグリコンヌの二重奏でハウルベルン音楽賞を取った音楽家は、レオ・ドヘイクしかいないからのう。二重奏での受賞も珍しいから覚えておったんだ」
「すごい! 問題もぴったり合ってるよ。すごいよおじいちゃん!」
「そうかのう」
実際のところ、反応は少し遅れた。テンプルとグリコンヌがでた時点で、解答ボタンという名の机を叩いておかなくてはならない。テンプルというのは、弦のあるバイオリンのような楽器で、グリコンヌは水の魔法を使ったピアノのような楽器だ。テンヒルさんは音楽はわりと好きなようで、ハウルベルン音楽賞の受賞者のことはだいたい知っていた。だから、テンプルとグリコンヌが出た時点で、問題は絞られる。音楽賞名か音楽家、この二つに絞られる。ただこの年、じいさんの記憶によると、レオ・ドヘイクは二重奏で、複数の音楽賞を受賞している。だとすると、音楽賞名が問題になる可能性は低い。となると、のこるは音楽家の名前、レオ・ドヘイクに絞られることになる。
それから、樹暦とは、この世界で広く使われている暦で、樹暦356年、オホイゾク帝国の王、ハバメ三世が、新たな暦を作る際、国で一番古い樹木を切らせ、その年輪の数が356あったことから、その年を樹暦356年とした。その後、ハバメ五世時代、オホイゾク帝国の北西進出により、樹暦は世界に広まった。と、じいさんの記憶にある。
「えーと、じゃあ、次の問題読むね。魔法元素の一つであるfは」
エレナはちらりとこちらを見た。
「つづきを」
俺は言った。
「むう、風を表しますが、sは」
机を叩いた。
「土」
「正解。もう、なんでひっかからなかったの」
エレナは悔しそうな顔をした。
「ほっほっ、ばればれじゃよ」
わざわざ、魔法元素の一つである、などと、付け加えているのだから、別の魔法元素に関する問いがあると考えるべきだ。もし引っかけ問題でないのなら、魔法元素fはなに? という問題になるはずだ。
「樹暦1860年と1861年、団結組み討ちで、二度大光杯で優勝したチームはどこ」
団結組み討ちとは、五対五で争われる格闘技寄りのスポーツである。相手チームのメンバーを倒すか、ラインの外に出せば、一点入り、仕切り直しになる。合計五点とったチームが勝ち、五対五で一斉に行われる相撲のような競技である。嵐の時に木と木がぶつかる音を、こちらの世界では、鳴らし、というが、これは、団結組み討ちの試合中に、選手と選手がぶつかる音を、鳴らし、といい、そこからきている。
残念ながら、いくら考えてもこれ以上の知識は出てこなかった。どうやらテンヒルさんはスポーツに関しては、あまり興味がないようだった。
「わからんのう」
じいさんの記憶にないものは答えようがない。俺は降参した。
「正解は、エペトランでした。おじいちゃん、スポーツとか興味ないもんね」
エレナはうれしそうに笑った。
「スポーツは、見てて何が楽しいのか、いまいち良くわからん。知りたいという気持ちがわいてこんのだよ」
と、テンヒルさんは思っているのだが、いやいやいや、スポーツには先の読めないドラマがあるんだよ。選手の組み合わせや、ポジション、そういったことを考えるのがおもしろいんじゃないか。わかってないな、このじいさんは。
「じゃあ、次の問題行くね」
「うむ、よろしく頼む」
一時間ほど、モンドを楽しんだ。




