52 加勢
「ふざけるな!!【氷柱】!!」
父親に対して、湧き上がる怒り。それを、無駄だと分かってもぶつけていく。
「そんな魔法、私には効かないぞ」
飛ばされる氷柱は、全てブライの体に当たる前に消失してしまう。それでも。ヴィリスは撃ち続ける。撃たない限りには、感情を発散できそうにはなかった。
「無駄な足掻きを!!」
風魔法で体が浮き、後ろに飛ばされる。その上、炎魔法が飛んでくる。それを氷で相殺するも、勢いのまま後ろの木へと強く体を打ち付けられてしまう。
「ウッ……!!」
周囲にいたエルフたちは、今起こったことから危険を察知し、一目散に逃げていってしまう。
「実に弱いな…… まだまだその程度ではないだろう? 私の息子よ、さらなる力を示さない限り、私は失望してしまうな」
「まだ、戦えます」
悠々と、ブライは歩み寄ってくる。そこには、強者の余裕と自信があった。見せる仕草のひとつひとつから、ひしひしと感じられる、強気な姿勢。数々の戦いを乗り越えてきたという確かな思い。
「よろしい。よろしいよろしいよろしいッッ!!」
舐めきっている父親の、腐敗した精神を叩きのめしたい。それだけが今のヴィリスの望み。自分の力で、この局面を乗り切るしかないんだ。そう思っていた。
「ヴィリス!!」
「ほう、味方の加勢か」
ミランダたちが、木々の間から姿を現す。
「やあ、我が息子たちよ。存分に抗うといいよ!!」