50 父
「ああ、懐かしいヴィリス。私の息子よ」
「久しいですね」
ようやく会えたその人物は、さほど老けてはいなかった。ヴィリスと接していたときから何一つ変わらない様子に、ヴィリスは驚いていた。
すべてを見通すようなはっきりとした眼光と立ち振舞、がっつりとした体型に濃い顔立ち。
まさに、英雄を語るにふさわしい風格の男である。
「ここまでヴィリスがたどり着けるだろうと、私はずっと信じていた。君が私の使命を全うできるはずだと」
「どういうことなんですか、父さん」
「すべては私の手の中で踊らされていたに過ぎなかった、というわけなのだよ。君が私に接近し、こうして再度出会うことも、私の計画通りなのさ」
「あなたの魔法は、一味違うようですね。どんな能力ですか」
「勝負の相手には、自分の手の内を気安く教えるものではないんだよ。とはいえ、これだけは教えてやろう。私こそ、【七選抜魔法師】、【神話】だということ」
「やはりそうでしたか」
姿をいっさい見せず、完全に自分たちの動きを止めることができた【神話】に、ヴィリスはただならぬものを感じ取っていた。
「なるほど、さすが私の息子、といったところかな。動揺しない、か」
「動揺はしていますよ、あなたが僕を勝負の相手というものですから」