39 邪悪の根源、【深淵】のジェーン
土魔法師ラインランド。彼は自らが生み出した土霊兵もろとも、ヴィリスの【|氷圧《アイスプレッシャー】で凍らされてしまった。土霊兵の中の精霊ーールートニの反応もない。きっと、これで終わったのだとヴィリスは思っていた。
「ありがとうございます、ミランダ」
「いや、貴様のためだといっただろう」
「こちらからするとどこか癪に触りますが」
「それはいわなくたっていいだろう」
ミランダは、珍しく笑顔を見せた。
「見てください、皆さん」
土によってつくられた世界が、崩れ去っていく。ヴィリスたちを中心に突風が吹く。世界はまっさらな世界へと化す。
ヴィリスたちにだけは色が残っている。
「残っている、ラインランドたちが?」
氷漬けの土霊兵は、土の世界、いわば【時の狭間】からヴィリスたちと同じように残り続けた。
「ようやく、ようやく私の世界へと招き寄せられた。英雄の息子」
「ジェーン、ですか」
浮かべる表情が、どれをとっても醜い。顔立ちは整ってより若々しく見えるのだが、内に秘める闇が、不気味さと腹黒さといった汚さを全面に押し出してしまっている。
「そちらは英雄パーティー全員集合、といったところだな」
氷・光・炎・風・土、そして闇の魔法師。
いわば、確認可能な【七選魔法師】は全員集まっていた。
「僕たちは、どうしてここに?」
「ここは、私の精神世界だ。心の闇が、世界と妄想の境目を曖昧にして作り上げた空間だよ。ここでの攻撃は現実世界と変わらない」