35 戦闘、ラインランド 前編
「戦い、ですか」
「そうだ、この土魔法師【大地】兼、古代遺跡管理者である私。それが求めるのは強さの果て。噂は耳にした、氷魔法、覚醒したらしいと」
「それを、なぜ」
「噂なんてその程度のものさ、広がるのも時間の問題というわけだ。さあ、戦おう、どちらが強いか」
土魔法師ラインランドであろうと、全員に絶大な力が授けられた【七選魔法師】には、どこか自惚れている面があった。「自分こそ最強」という思想が、ヴィリスでさえ頭をチラつくことが少なくない。
風魔法師ルートニも、同様に自惚れが自分の身を滅したといってもよい。
「前は、仲間だったじゃないですか。不毛な争いだとは思わなかったのですか」
「前は、そう昔は、の話だ。もう過去のことは関係ない。いまや敵という位置付けにあるヴィリス、英雄の息子であるあんたをぶちのめしたいって思いが芽生えても仕方ないだろう? なんせ『無能』と信じてやまなかった相手がルートニを殺せるほど強くなっているのだからな!!」
背中を逸らし、腕を連動させ、後ろに逸らす。伸びた手の先に、周囲の砂が集まっていく。
「大地の怒りを、受け取るがいい!! 【砂地獄】」
伸ばした腕を手前に戻していき、上部へと持っていく。手はついに重なり。
砂は手の上に集まる。
「くらえ!」